詩織さんへの取材を終えて

 アメリカは日本に比べて女性の社会進出は進んでいますが、まだ管理職には男性が多く、目に見えないガラスの天井があるとされています。その男性の報復を恐れて声を上げられない人々がたくさんいます。そのため、3月20日に行われた女性活躍推進に取り組む国際団体カタリスト主催の会議でも、企業がダイバーシティを推進し、女性が働きやすい職場文化をつくるために、また企業のリスクを避けるためにもハラスメントに対する意識を高める必要があることが強く語られました。

 確かに、米大企業では、既にセクハラに対する社員教育が徹底していて、即刻の対応や秘密厳守の原則が守られているとの報告がありますが、まだホテルなどのサービス業などでは、セクハラが横行しており、75%の人が訴えることもできないまま泣き寝入りしているといわれています。

アメリカ社会は次なる動き「タイムズアップ」に期待

 弁護士を雇うことができない経済的に弱い立場の女性を救うために、セクハラを告発した被害者たちを支援する基金「Time's Up」(もう終わりにしよう)という次なる運動が稼働し始めました。この基金は、ミシェル・オバマ元大統領夫人の首席補佐官を務めた経歴の持ち主であるティナ・チェン弁護士とロベルタ・カプラン弁護士の二人が基金設立の先鋒に立ち、これにリース・ウィザースプーンやエマ・ストーンなどの芸能界の女性たちが寄付に賛同し、現在22億円が集まっています。この運動が今後どのような展開を見せるのか、注目されています。

 アメリカでも日本でも女性の人権が守られる世界にするためには、人々の意識を変え、その権利を確実なものにするための行動が求められているのです。

聞き手・文・写真/羽山祐子