ずっと正社員で働き続けてきた人と、契約社員や派遣、パートなど非正規社員として働いてきた人やフリー・自営業の人とでは、退職金や年金の額が異なり、老後のために備えることの優先順位も違います。一方、仕事を辞めて現在は専業主婦をやっているという人も、夫の定年が大きな生活の変化をもたらします。

 しかも、働き方は異なっても、すべての女性に共通する「課題」があるんです。

安原 それは何ですか?

井戸 定年後というか、60歳以降の人生は男性よりも女性のほうが長いということです。そのため結婚していてもしていなくても、大半の女性は人生後半に「おひとりさま」になります。

 図は既婚女性の一生を90年前の1920年(大正9年)と2009年(平成21年)で比較したものですが、女性の人生が驚くほど変わっていることがひと目で分かりますよね。

女性の人生後半は「おひとりさま」になる可能性が高い
女性の人生後半は「おひとりさま」になる可能性が高い

安原 夫が現役を引退してからの人生がずいぶん長くなっています…。

井戸 大正時代は、夫の現役引退の5年後に妻も亡くなっていたので、定年後の人生をどうしようなんて、あまり考える必要がなかったのですけれどね。女性の平均寿命は現在86.6歳。夫の死亡からでも8年もの時間があります。

安原 すべての女性に「おひとりさまの老後」の心構えが必要ということですね。「定年男子」の大江さんの意見も聞かせてください。

大江さん(以下、敬称略) 僕は新卒で入社した証券会社に60歳の定年まで勤め上げました。部下には女性社員もたくさんいましたし、なかにはそろそろ「定年女子」という人もいます。時々昔の職場仲間で集まることがあるのですが、そんなときに「定年後や老後が不安ですか」と聞くと、みんな、不安だと言うんですね。ところが「じゃあ、自分が老後にどれくらい年金をもらえるのか確認しましたか」と聞くと、ほとんどの人は「していない」と答えます。若い男子からは「どうせ僕らの老後には年金なんて出ないから、調べたところでしょうがない」なんて声があがったりする。