最近は、尾畑さんのように佐渡島の魅力に魅かれてUターン、Iターンする人たちも増えてきた。「総務省の地域おこし協力隊という制度を利用し、佐渡島には約20人弱の方が来て、多彩な活躍を見せてくれています。私もいい刺激を受けています」。

 そのほか、島の食材で料理するフレンチのシェフやそば職人、食品加工に携わる人など、食に携わる人たちも増えた。山菜や新鮮な野菜などに着目し、その価値を高める工夫で新たな食文化を作っている。

有効求人倍率は東京より地方のほうが高い

 Uターンを考えたとき、「地方に行って、仕事があるのか?」という不安を感じる人は少なくない。

 「都会は仕事が多いように思われていますが、2014年の都道府県別有効求人倍率を見ると、東京より有効求人倍率が高い県がたくさんある。うちの酒蔵でも募集をしているんですよ。もし、地方に希望するような職がなければ、起業という選択肢もあるのではないでしょうか。実際、佐渡に来て起業に挑戦している女性もいます。地方で起業にチャレンジする、ということを考えてもらいたくて、今年は、学校蔵(廃校を酒造りや情報発信の場として活動しているプロジェクト)の特別授業のテーマのひとつに、『地方で起業』を選びました」。

 地方で働くために大事な心構えは何なのか。「それは、肩書に頼らないこと」と尾畑さんは言う。

 「都会では肩書、役職で周囲の対応が変わることが多いかもしれません。でも、地方で仕事をするのに名刺は大きな意味を持ちません。名刺に書かれた肩書ではなく、人として物事に向かう姿勢や行動そのものが重視される。もっとも、その人の働く姿勢が問われるという点に関しては、基本的には都会でも地方でも同じですよね。地方でデキる人は東京でもデキる人だと思います」。

 ただ一方で、「生活に関しては、都会と地方では明らかな違いがある」とも。