世界に衝撃を与えた米大統領選の決戦からもうすぐ1カ月が経ちます。トランプ勝利に影響を与えたミシガン州の新聞社で記者経験を積んだ在米ジャーナリスト・長野美穂さんに、アメリカ人が語りたがらない「ホンネの声」を取材・ご寄稿いただきました。前後編2回に分けて、記事をお届けします。
トランプの当確が決まった瞬間、私はカジノの街ラスベガスにいた。
ネバダ州民主党の開票パーティー会場を取材中に「次期大統領はトランプに決定」というテロップがTV画面に流れた。
その瞬間、ヒラリー支持者の女性たちが泣き出した。
その涙の瞬間を逃さないよう、カメラのシャッターを切りつつ、TVの実況をチラッと見た。
あれ? 16人の選挙人団を抱えるミシガン州の結果がまだ出ていない。
選挙人10人を抱えるウィスコンシンもまだ開票途中だった。
この2州の開票結果を待たずに、ヒラリー・クリントンは敗北を認め、トランプに自ら電話をかけたのか。
そこが私には驚きだった。
ミシガンとウィスコンシン。
グレート・レイクスと呼ばれる五大湖に添い寝する中西部のこの2州。かつては民主党の牙城だったこの2州が、今回はヒラリーの手中に落ちなかった。
結局それがクリントン陣営の息の根を止めることになるとは…。
その時点でまだ赤にも青にも染まっていないミシガンの地図を見ながら、私の心は6年間暮らしたミシガンに飛んでいた。