なぜNetflixの作品はクオリティーが高いのか

 「火花」は、Netflixが世界中で提唱する「クリエーターズ・ファースト」の精神にのっとって制作されています。Netflixにとっての「クリエーターズ・ファースト」とは、作家性を重要視し、自由な作品作りが尊重されていることです。

 本作は、「ストロボ・エッジ」や「オオカミ少女と黒王子」などのラブストーリーを手掛け、海外での評価も高い廣木隆一さんが総監督を務めています。「火花」は全10話ありますが、各話の監督には、「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌さん、「横道世之介」の沖田修一さん、「永い言い訳」の助監督や、「白鳥麗子でございます! THE MOVIE」の久万真路さん、2017年冬に「逃げた魚はおよいでる。」が公開予定の⽑利安孝さんらが選ばれました。

 いずれも、作家性は違えど、実力派の監督ばかりが名を連ねています。派手な実績があるかどうかという人選ではなく、「じっくりと作品に向き合いたい」というNetflixの姿勢が伝わってくる人選であるということは、彼らの映画のファンなら感じられるのではないかと思います。

 Netflixの人選への姿勢は、「火花」の主演を林遣都さんと浪岡一喜さんという演技派・実力派の二人に抜てきしたことにも表れていると思います。また、実際の映像を見ても、テレビで放送するときのように、誰にでも分かるようにと意識し過ぎて、深みのようなものが表現できていないということにはなっていませんでした。

 先ほども書いたようにNetflixは「クリエーターズ・ファースト」の精神にのっとり、各国でもコンテンツを作っています。海外でも、アカデミー賞を受賞した「ムーンライト」を手掛けたブラッド・ピットさんの設立した製作会社「Plan B」とNetflixがタッグを組み、韓国のポン・ジュノ監督の「オクジャ」や、ブラッド・ピットさん主演の「ウォー・マシーン」などの映画作品をプロデュースし、全世界で公開されました。

 Netflixのような海外の企業と一緒に、インターネットという場で作品を配信することには、どんなメリットが考えられるでしょうか。例えば日本では、ネットだから過激な表現もOK、コンプライアンスもテレビよりも甘いし、ということでネット配信を評価する向きもあります。しかし世界的には、「ネットだからこそ、数多くの人、さまざまな国で見られる作品を制作しよう」という考え方の下で動いています。そこから、「多様性を重要視した物語を作る」という方向性が生まれ、日本だけではなくどこの国のどんな人でも共感できるスト―リーを模索する機会にもなるのではないでしょうか。