女性の無償労働を家庭でも会社でも当たり前にしない

 家庭でタダでやってるということは、こういう作業が好きなのだろう。だから文句があるわけもないと思われていたのではないかと思う。もし文句を言えば、女性的ではないとみなされ、些細なことに文句を言うちょっと扱いにくい人と見られただろう。すべてにおいて、「女性らしさ」を引き合いに出されるから、女性らしくいようと思う人であればあるほど、疑問を口にできなくなる。

 しかし、会社の中でする労働は、家の中で無償でお母さんがやってきたことであっても、無償ではないし、女性がそういうことが好きでやっているというものでもない。かつては、お父さんは稼ぎ、お母さんは家事をするという役割分業がうまいバランスで大多数の家庭で成り立っていたから、それが、普通のことのように受け止められていただけであって、それは当たり前ではない。家庭外でも同じことを期待するのは大間違いであるし、その役割分業のバランスが変わってきて、男は外で働き、女は家を守るということが、当たり前でなくなった現在は、家庭の中であっても、家事労働をすることが女性だけの当たり前ではない。だからといって、家庭内で賃金を出すことはできないかもしれないが、その当たり前でないことだけでも、まずは認識しないと、家庭内でのバランスはますます崩れてしまうだろう。

 ニューズウィーク日本版に掲載された『未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会』という記事で、30~50代の中高年男女に「あなたは幸福ですか?」と尋ねたところ、日本の未婚男性の「不幸率」は43.5%と群を抜いていたのに対し、日本の未婚女性はわずか8.1%であった。

 この記事を書いた教育社会学者の舞田敏彦氏は、これについて「伝統的なジェンダー観が根強い日本では、未婚男性が幸福を感じにくい社会になっている」と分析しているほか、男性は、離婚率が高い年ほど自殺率も高い傾向にあるが、女性は逆になっていることも指摘。これについても、「女性の場合は、家庭の諸々の束縛から解放されるという点で、離婚は自殺の抑止因になっていることも考えられる」と分析している。

 これを見て、男性の感じる不幸の根源の一つには、「結婚すれば無償労働を得られる」「女性は会社でも喜んで無償労働をしている」と当たり前のように思っていることにあるのではないかと思った。

 今回の二つの記事にあるアンケートの結果は、かつての家庭を見て育った世代の男性が、まだそのバランスが変わりつつあると気づいていないということの表れだと思うが、この結果から現在の変化を知って、かつてのような考え方のままでは、自分をもっと苦しめることになるということを知るきっかけになればいいと思うのだ。

文/西森路代 写真/PIXTA

プロフィール
西森路代
西森路代
ライター/人気評論家
1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。