結局、最後のツケは私たち生活者に

高山:今後の世界経済は波乱含みですね。

中野:そうですね。そして、パナマ文書の問題として補足すると、米国ではアップルがタックス・ヘイブンを本社としている例をはじめ、多くの大企業がこれを実行していて、むしろタックス・ヘイブン活用を是としなければ、株主・投資家から経営が糾弾されるといった風潮も定着してしまっています。これを看過したままでは、米国経済が拡大しても税収増にはつながらず、資本主義の抜本的システムが成り立たなくなってしまいます。

高山:そうなんですか。日本でもこの風潮が定着すると大変ですね。

中野:そうです。日本でもこの事象が定着したら、アメリカ同様、経済成長 → 税収増の図式が壊れます。本来払うはずの税金がタックス・ヘイブンを利用して払われずその結果、税収が少なくなります。結局そのツケは私たち生活者の税負担増と社会保障制度の劣化に直結することとなり、国民生活の窮乏化を招く結果となるのです。

高山:パナマ文書は、お金持ちのことで自分には関係ないと思っていた人も少なくないと思いますが、そう考えると、パナマ文書は私たちに大きな影響をもたらす大変な問題ですね。

中野:国家はその国の経済活動(GDP)を拡大させることで、政府も相応の所得(税収)を増大させられるという図式で、資本主義国家の仕組みが成立しているので、パナマ文書は近代資本主義制度の根幹を揺るがすほどの大きな問題提起といえるのです。

プロフィール
中野 晴啓
セゾン投信(株) 代表取締役社長
中野 晴啓(なかの はるひろ)さん
 1963年生まれ。1987年明治大学商学部卒業後、クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社で資金運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者として運用アドバイスを手がける。(株)クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現し、2本の長期投資型ファンドを設定。資産形成世代を中心に直接販売を行ない、口座数9万口座、運用資産総額1200億円超を有する。積立による長期投資を広く説き続け、「積立王子」と呼ばれている。『預金バカ 賢い人は銀行預金をやめている』(講談社α新書)、『投資信託はこうして買いなさい』(ダイヤモンド社)、『見る・読む・深く・わかる 入門投資信託のしくみ』(日本実業出版社)などの著書がある。公益財団法人セゾン文化財団理事。NPO法人元気な日本をつくる会理事。

高山 一恵
(株)Money&You取締役
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
DC(確定拠出年金)プランナー

高山 一恵さん
 1974年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、株式会社 Money&Youの取締役へ就任。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。
女性向け、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる『FP Café(R)』を運営。
「Woman Type」「ZUU Online」等のウェブ媒体での連載、「プレジデントウーマン」「日経ウーマン」「Oggi」「FRaU」などの女性誌にも多数出演。
主な著書に「金融機関が教えたがらない年利20%の最強マネー術」(河出書房新社)、「パートナーに左右されない自分軸足マネープラン」(日本法令)、「史上最強のFP2級AFPテキスト」「史上最強のFP3級テキスト」(ナツメ社)「お金が貯まる!スピード家計簿」(宝島社)などお金の分野での著書は数十冊に及ぶ。