「非正規の給料が上がる」とは限らない

カワイ 「均衡」は、文字通り「バランス」です。例えば、「年齢が上だからバランス取れてます!」「責任があるからバランス取れてます!」「経験があるからバランス取れてます!」「異動があるからバランス取れてます!」といった具合に、もっともらしい理由を付ければ、賃金格差が許されてしまうの。だから「正社員の賃金が高過ぎるので、非正規とのバランスを取るために正社員の賃金を下げます!」もオッケー。

ニケ ゲッ。同一労働同一賃金になれば、非正規の人のお給料が上がるんだと思ってました。まさか、正社員のお給料が減っちゃうだなんて……聞いてないですよ~!

カワイ 均等の主語は「差別を受けている人」、均衡の主語は「職場」です。「均等」は、差別を受けている人(=処遇の低いほう)を高いほうに合わせるのが目的だけど、「均衡」は職場のバランスを取るのが目的だから、低いほうに高いほうを合わせても問題ないのです。

ニケ メチャクチャインチキじゃないっすか。

カワイ 50年以上前の1951年にILO(国際労働機関)では、働く人たちにとって「同一価値労働同一賃金」が最も重要な原則だとして、第100号条約(同一報酬)を採択しました。この根幹を成すのは「均等」です。職種が違っても、「労働の質が同じなら同一の賃金水準を適用しなさい!」って一切の差別を禁止しました。

 欧州でも「均衡を適用してるよ~」っていう人たちもいるけど、欧州は基本的に職種によって賃金が決まってるのでバランスを取るケースは限られます。でも、日本は……。

ニケ ズブズブになりそうな気がするぅ~。

カワイ ズブズブ(笑) 的をえた表現ね。職務給を都合よく廃止できるし、正社員の賃金カーブを非正規のカーブに近づけるために、40代以上の賃金を下げちゃおう~なんてこともできる。ホント、ズブズブよね。

ニケ ってことはですよ、35歳契約さんの会社も「業務を見直してバランス取りました!」って理由を付けて、正社員も契約社員も、お給料を減らしちゃうかもしれないですよね?

カワイ やろうと思えばできます。「均衡」の2文字がある以上、どうにでもなりますから。