「均等」ではなく「均衡」というトラップ

カワイ 若いときにあまり差が出ないのは、賃金カーブの違いです。正社員の賃金カーブは50歳代前半をピークとする山型なんだけど、非正規はフラットなの。なので30代中盤から徐々に差が広がってきて、40代になるとその差は歴然としてきます。

 もっとも差が大きくなるのが50代。平均年収に換算すると200万円近くの格差ができてしまうのです(※50~54歳 非正規209.6千円、正社員400.9千円 「厚生労働省・賃金構造基本統計調査」2016年)。

ニケ ってことは、35歳契約さんは……ざわつきますよね。せっかく期待してたのに、これからどんどん広がっていっちゃうなんて……。ひどいなぁ……。

カワイ ほとんどの企業は正社員化を進めてるのよね。

ニケ 確かに! ニケの会社も「3年たったら正社員!」って貼り紙がトイレにありますぅ(笑)

カワイ トイレの神(紙)のお告げね(笑)

ニケ うまいっ! 座布団1枚!

カワイ (苦笑)ただね、正社員化を進めているのは30代前半までで、40代以上はそのままのケースが多いのよ。

ニケ やっぱりインチキ臭いっ!

カワイ (笑)インチキ臭いっといったらインチキ臭いけど、企業があの手この手で抜け道を探すのは今に始まったことじゃないですからね~。そもそも、日本の同一労働同一賃金自体がインチキ臭い。

ニケ え~、でも「同一労働同一賃金」っていうのは、「同じ仕事内容だったら同じお給料を払わないとダメ」ってことだから、インチキとかはできないんじゃないですか?

カワイ 日本の同一労働同一賃金は「均等」ではなく「均衡」です。ここがインチキ。

ニケ 均衡?

カワイ 同一労働同一賃金を考える上で、「均等」か「均衡」かは、極めて大きな意味と、大きな違いを持っているの。「均等」は、一言で言えば「差別的取扱いの禁止」のこと。国籍、信条、性別、年齢、障害などの属性の違いを賃金格差(処遇含む)に結び付けることは許されない。もし、仮にそういった差別が行われたら、労働者は損害賠償を求めることができます。

ニケ えっと要するに「正社員と同じ仕事をしているのに、お給料が安いんです」って契約の人が訴えたら、会社は絶対に「正社員と同じお給料」を払わないとダメってことですね?

カワイ ピンポン。その通りです。ところが「均衡」だと……。

ニケ だと?

カワイ 「だったら正社員の給料を下げちゃおうっか~」って言い返すことができる。

ニケ ううぅ~、よく分かりません!