仕事に対する姿勢を分かってくれた母

カワイ 私の母も相談者の方と同じで、完璧な専業主婦でした。父のため、私と兄のため、掃除も洗濯も、料理も完璧。どこから見ても、完璧な母。しかも、私は30歳になるまでず~っと自宅。大学のときに飲めないお酒を飲んで、つぶれたときなんて、ひどいもんでしたよ。

ニケ 勘当されたとか?(笑)

カワイ 一緒に飲んでいた友だちが困って、彼を呼んだ。彼は車で、つぶれた私を抱えて家まで運んでくれたんだけど、母はものすごい険相で出てきて、彼はビビって「す、すみません! 飲ませたのは僕ではないです! 僕は運んできただけです!」って、必死で言い訳したらしいのよ(笑)

ニケ キャハハ~。そりゃあ、彼も必死ですよね!

カワイ それで次の朝。階段を「カンカンカンカン」って、ものすごい足音で上がってくる音で、私は目が覚めた。でも、二日酔いで頭痛いし、すぐに状況が理解できなかったの。そしたら、部屋のドアが「バン」って開いて、母が「お酒を飲ませるために、大学に行かせてんじゃありません! 今日から門限は9時!」って、怒鳴って出ていきました(苦笑)

ニケ キエ~っ! で、門限9時ですか?

カワイ そうよ~。しかも、ちょうど忘年会の時期で、テレビで「急性アルコール中毒で病院に運ばれた」みたいなニュースが流れるわけ。その度に、母はキリキリする。唯一、救いだったのは、父がキリキリする母の隣で、「いや~、薫にお酒の飲み方教えなかったからなぁ~。アッハハ」とか大笑いしてくれたことかな。そうすると、また母は怒ってたけどね。

ニケ アハハ、ウケる~~! お母さんは、薫さんがず~っと仕事に爆走してることについては、何か言ったりしなかったんですか?

カワイ 言われたのはスッチーを辞めたときだけかな~。実家を出て、独立してからは何も言わなくなった。といっても、私が忘れてるだけで、お小言は言われていたような気もする。

 ただ、明らかにあるときから、何も言わなくなった。

 それで、私が40を過ぎた頃だったかな~、なんとなく母に申し訳ないなと感じて、謝ったことがあったの。「自分勝手な人生を歩んでて、ごめんなさい。孫の顔を見せてあげることもしないで……。ごめん」って。そしたら、母は意外なことを言ったのよ。

ニケ おばあちゃんと言われたくないから、孫はいらないとか?(苦笑)

カワイ ううん。そうではなくて、「あら、いいじゃない~。ママも薫チャンみたいに生きていける力があったら、そうしたかったわ~。ステキよ。頑張りなさい」って、てっきり苦言を呈されると思ったら、ニコニコしてこう言ったのよ。

「自分勝手な人生を歩んでて、ごめんなさい」と母に謝ったら…… (C)PIXTA
「自分勝手な人生を歩んでて、ごめんなさい」と母に謝ったら…… (C)PIXTA

ニケ お母さん、すごいですね! めちゃ、ダイバーシティ! でも、それって薫さんが、成功してるからじゃないんですか?

カワイ 成功? 何をもって成功というのかしら? 成功とかなんとか関係なく、母は私が「覚悟を決めて生きている」ことを、認めてくれたんだと思うの。どんな仕事をしていようとも、どんなポジションであろうとも、私が自分の人生を、生き生きと前向きに生きてる。そう感じたから、母は私の生き方を認めてくれた。私はそう解釈しています。

ニケ なるほどね~。娘が元気で生き生きしてるのって、やっぱり母親ってうれしいんですね。

カワイ あのね。……ちょっと厳しいこと言っていい?

ニケ わ、私に対してですか??

カワイ ううん。相談者の人に対して。

ニケ ちょっと恐いですけど、薫さんは理不尽なことは滅多に言わないので。はい、心して私も聞きます。

カワイ 「滅多に」っていうのが気になるけど……、まっいっか(苦笑)