かつて女性は職場で差別されてきた
カワイ まず、「機会の平等」はニケさんも分かるわよね?
ニケ はい! 機会を平等にするってことですよね!
カワイ んも~! まんまじゃないの。機会の平等とは、差別の禁止です。「女性だから」とか、「結婚してるから」とか、「子どもがいるから」といった理由で、昇進できないことがないようにするのが、「機会の平等」です。
ニケ そういえば先輩が「今の子たちは簡単に管理職になれて、恵まれている」って言っていたんですぅ。
カワイ そうですよ。1986年以降の「男女雇用機会均等法世代」(※1)の先輩たちは、「機会」を勝ち取るために、職場で戦ってきた世代です。ホントに大変だったのよ。「女だから」という理由だけで、会議にも出してもらえなかったり、総合職で採用されながら実際にはお茶くみだったり……。
ニケ 会議に出なくていいなんて、羨まし~!
カワイ あ、あのね~。まぁ、そうね。そもそも差別は、「差別されている側」しか感じないからなくならない。
ちょっとイメージしてみて。もし、自分がすっごく頑張って取り組んでいる仕事の大切な会議があったときに、「キミは来なくていい」って言われたらどう思う?
ニケ ……う~ぅ。自分が一生懸命やってる仕事だったら、ショック。だって、それって「オマエはいらない」って言われてるってことですもん。
カワイ 「来なくていい」と言われてしまう理由が、「女だから」だったら?
ニケ え~! そんな今さら、男にはなれないし。どうしろっていうんだ! ムカつく~。
カワイ でしょ? これが「差別」です。その差別をなくすためにできたのが「男女雇用機会均等法」です。
でも、法律ができても実際の現場は、いっこうに差別は改善されなかった。そこで私たちの先輩たちは、一つひとつ「差別」を解消するために力を尽くしました。
以前、インタビューした男女雇用機会均等法世代の女性は、こんなふうに言ってました。「『会議に参加させろ!』って上司に何度も掛け合って、やっと出してもらえることになったから、会議では、どうにかして自分の存在価値を示さなきゃと、必死でした。男性たちに認められたい。責任ある仕事を任されたい。ホントに必死だった」って。
ニケ そうなんですかぁ……。認められたいって気持ちは分かりますけど、そんなに必死にならなくても……。
カワイ なんとかして獲得した「機会」と、最初から当たり前のように与えられている「機会」では受け止め方が変わるかもしれませんね。仕事で得られる感動が、薄れるっていうのかな。
ニケ ってことは、「女性を管理職にして、何が変わるのか」とか「どんなメリットがあるか分からない」なんて質問したら、怒られちゃうかも……。
カワイ ちょっとがっかりするかもね。「管理職のような責任ある仕事を任されるなんて、うれしいことなのに。なんで分かってくれないだろう」って。