「手伝っている」という意識を変えよう

カワイ 自称透明人間の彼女は、「やるだけ無駄」って怒ってました。最初の頃は一生懸命仕事を見つけて、残業だって喜んでやった。でも、どんなに頑張っても給料は変わらないし、昇進することもない。だったら、必要以上に頑張る必要もないから、言われたことだけやればいい。そう思うようになったそうよ。

ニケ そりゃ、やる気なくしますよ。でも……、担当営業が松潤だったら、やるだけ無駄でも私、頑張ります! そしたら自分の名刺もつより、松潤の名刺の片隅に入ってるほうがうれしいし。ああ、愛しの松潤さま~。

カワイ ……松潤ファンだったの? 私はニノだなぁ~。一緒に引きこもってゲームとかしたいわあ~。……ん? いやいや、そんな話ではなく、「営業がムカつく」って相談だったわね。

ニケ ええ~っ、そんなことどこにも書いてありませんけど~(苦笑)

カワイ 失礼! でも、ムカついていいと思いますよ。私だったら「おい、ざっけんなよ~。いったい誰の仕事手伝ってるって思ってんだよ!」って怒り心頭でしょうから(爆笑)。

 ただね、営業アシスタントのお仕事というのは、文字通り営業アシスタント。相談者の方の会社が透明人間さんの会社のように、1対1で付いているのか、営業事務という部署全体で営業マンたちのアシスタント的仕事をしているのか定かではないけど、どういった形態であれ、「事務(アシスタント)」は「事務」がお仕事で、「営業マン」は「外で売ってくる」のがお仕事です。

 なので、「基本的には営業マンの仕事を手伝っている」という認識は捨てたほうがいいです。その方が、自分が楽になります。

ニケ そんなの無理無理ムリ~っ! 割り切れないですよ! 薫さんだって、「ざっけんなよ~!」って凄み効かせるって言ってたじゃないですか。

カワイ そうです。そういう気持ちにならないためにも、手伝ってるって思わないほうがいいんです。

 例えば、ニケさんは彼に、「なぜ分かってくれないの? 私は、あなたのためにやってるのよ!」と怒ったことない?

ニケ な、なんですか、いきなり。そりゃあ、ありますよ。彼のために仕事早々に切り上げて、ご飯作って待ってるのに、「飲み会になった」とかってメールきたときとか。

カワイ ニケさんは、“彼のため”に必死で仕事終わらして、“彼のため”においしい手料理を作った。彼が「僕のためにこんなごちそう作ってくれたなんて。超感激! ニケ、ありがとう(ブチュ~)」というリアクションを期待してたわけです。でも、その期待どおりのリアクションを彼がしなかったから頭にきた。

ニケ す、するどい。なんで分かるんですか?

カワイ そんなもん分かりますよ。ここでは「期待するリアクション」が、自分の労働への対価になる。

ニケ ……分かった! 薫さんの言わんとしてること。つまり、営業事務の仕事は、そもそもが「営業のサポート」で、仕事の対価は賃金であって、「営業の労いの言葉」じゃない。期待するほうが間違っているってことですね?

 確かに「営業のためにやってるわけじゃない。自分の仕事をやってるだけ」と割り切ることは必要かもしれないけど、やっぱりひとこと言ってほしいし、無視されたらムカついちゃうな~。

カワイ そうね。自分の気持ちをコントロールするのは難しいかもしれません。でも、「誰かのため」という感情ほどやっかいなものありません。だいたい誰かのためになるなんて、ものすごい難しいことです。

 「○○のため」じゃなく、「○○のことを思って」仕事をしてほしい。

ニケ それって、どういうことですか? また、分かんなくなってきちゃった~。