どんな親でも年を取る

ニケ　きっとお母さんも…。

カワイ　うん。ものすごく感謝してると思う。

ニケ　ニケ、思うんですけど、お母さんも、不安なんじゃないでしょうか。

カワイ　お母さんにしてみたら、自分の両親もいなくなり、ご主人もいなくなり、一人ぼっち。どんなに気の強い人でも、年を取ると弱気になる。感情も乱れる。子どもが想像する以上に、親は年を取る。

ニケ　親も年を取る…、ですか～。なんかドンと胸を突く言葉だぁ～。ああ～、なんか切ないですぅ。

カワイ　少し個人的な話をしますね。ちょっと長くなりますよ。

ニケ　大ジョブです！ 長～くていいんで、聞きたいです！ 先輩、お願いします！

カワイ　（笑）父のことがあるまで、私は近くに住んでいるのに年末しか実家に帰らず、3カ月～半年に1回ほど両親と都内で会って、ランチしたりするくらいでした。私が「中学生」の頃の父と母のまんまだとず～っと信じて疑わなかった。

　でも、前日まで全国各地にゴルフ三昧旅行をしていた父が「ちょっと具合が悪い」と病院に行ったら、がんだって分かった。しかも、余命3カ月～半年。何が起こっているのか分からなかった。それからというもの時間を必死で作り、家にも病院にも通いました。夜中や明け方に車を飛ばして、様子を見に行ったりもしたので、最低でも週3回くらいは実家に帰ってたかな。

　それで驚いたのは、父も母も、それなりに「おじいちゃん、おばあちゃん」になっていたことでした。物忘れもすれば、新しいことをなかなか覚えられない。一人ではできないこともたくさんありました。

　ピンポイントで会っているときは、父も母も「薫に会う！」って張り切ってるから、私は両親が老いていることに気が付かなかったのね。

　父はがんが見つかってひと月ほど入院しました。最初の1週間で、父は10歳くらい年を取ってしまい、ちょっと前までゴルフしていたのが、まるでウソのようだった。それで父の体を拭いてあげようとしたのね。そしたら父の背中が驚くほど小さくて。涙が止まらなかったです。

　父は頑張って7カ月も生きた。亡くなる1週間前には、兄妹がいる熊本旅行までできてね。ものすごく頑張ったの。

　父が亡くなってからは、母が大変で。母はとても優しい人で、あんなに優しい人に会ったことがない、というくらい優しい人でした。ところが一人になってから、すぐにパニクってキンキンするようになり…。元の優しい母に戻るには、なんやかんやいっても1年くらいかかりました。