今のうちに“部下力”を養っておく

ニケ ん? なんか分からなくなってきた。どういうことですか?

カワイ 「組織運営においてリーダーの及ぼす影響力は10%程度で、残りの90%は、部下であるフォロワーの人々の力が左右する」

 これはフォロワーシップ研究の教祖とも呼ばれる、米カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の言葉です。

 どんなリーダーでも下には必ずやフォロワー(=部下)がいて、フォロワーがロボットでもない限り、そこにはフォロワーの行動や心の有様が組織のパフォーマンスの係数として存在するの。

 言い方を変えれば、「デキる上司」というのは、部下たちの心をつかむことができる人。

ニケ つまり、この女性は「感情的に部下を全否定する」って時点で、「ダメダメ上司」ってことですね!

カワイ ビンゴ! 正解です。でもね、見方を変えれば、部下次第で上司を操ることもできるの。“部下力”ってヤツね。たいてい、デキル上司っていうのは、部下時代に上司の操縦法もうまかった人が多いのよ。なので、ちょっと大変かもしれないけど、本人もやる気になっているし、部下力を高めるいいチャンスね!

 以前、私の講義を聞きにきた30代後半の男性が、面白い話をしてくれたことがあったの。彼の部署に、まるで尊敬できない上司がやって来て、みんなで「アイツはダメだ」とバカにし続けているうちに、上司だけでなく、チーム全体もダメになっていってしまったというのね。

 ダメ上司に罵倒された若い部下たちは、あからさまにその上司をバカにしていて、最初はみんなで文句言って結束していたの。ところが、みんなで反抗的な態度を取れば取るほど、上司も、部下たちもやる気が失せて、全員のパフォーマンスが落ちてきてしまった。

 それで、「このままだと共倒れだ!」って思った男性は、同僚や部下たちと相談して、ダメ上司の「おだて作戦」に出たの。

ニケ それってなんですか? 変な作戦~。

カワイ ダメ上司に、「これを使った方がいいんじゃないですか?」とか、「こっちを部長は攻めてもらえませんか? 私たちはこっちをやりますんで」といった具合に、上司をノセながら仕事をするようにしたの。