集団心理のイタズラで、ウワサが一人歩き

 カワイ ディレクターや編集者と打ち合わせしているときに、ちょっとした一言とか仕草にドキっとするの。といっても、大抵の場合、次の日には「アレ? 勘違いだったかも。私、どうかしてた!」って正気に戻るんですけどね(苦笑)。

 おそらく誰もが一度や二度、そういった「勘違い体験」をしたことがあるじゃないのかな。だから“ウワサ”になる。つまり、どんなに「彼氏がいる」と公言しても、「毅然とした態度」をとっても関係ない。男と女って、理屈じゃないから。そういうものなのよ。

ニケ わぁ~、薫さん! ダメっすよ。そんなにコロッときちゃ! わ、私はそういう間違いは、全く経験ないですよ! でも、ウワサって、人から人に回ってるうちに、だんだんと本当の話みたいになっていきがちですよね。

 ちょっと前に、うちの会社でイケメンの新人クンとアラフォーのバリキャリ女性上司がウワサになったことがあって。最初ウワサを聞いた時、「それはナイよ」って思った。でも、みんなの話を聞いてたら、なんか「アルかも」って思うようになったんですよ。

カワイ 「集団心理」ってヤツですね。普通は人が多くなるほど、色々な角度から冷静な判断ができると考えますよね? ところが実際は全く逆。人が多くなればなるほど、大切なことが見過ごされ、偏った判断が下されてしまうの。

 特に、「~かもしれない的情報」だと、人間の「見えるモノをみるのではなく、見たいものを見る」という習性が働き、「そういえば、こんなことあった!的記憶」が掘り起される。その結果、「かもしれない ⇒ そういえば ⇒ そっか~ ⇒ そうなんだ!」って、ウワサが確信になってしまうんです。

ニケ そこで「否定」しようものなら……。

カワイ 火に油を注ぐようなもの。逆効果でしかないですよね。

 しかも、いまだに男社会の日本の会社では、女性の振る舞いは何かと目立ちます。小保方さんのときの“事件”を思い出してごらんなさい。

ニケ 例の本ですか? 意味深なタイトルの……。

カワイ いやいや、そうではなくSTAP細胞にいろいろな疑念が出てきたときに、科学とは全く関係ないことを週刊誌が書き立てましたよね。男と女のことです。あのときのバッシングはひどかった。下劣でした。結局、行きつくところはここなのか? って、怒りすら感じました。

 でもね、女性が「トークン」である以上、アレと同じようなことは起こるんです。

 トークンとは「目立つ存在」のこと。日本の職場では、女性は例外なく目立つ存在です。どんなに「自分はあまり目立たないと感じている」女性でも注目されます。

 「○○●○○●●●●」だと、「○」は目立たない。でも、これが「●●○●●○●●●」だと目立つでしょ? これがトークン(=○)が注目される理由です。

 注目されるのは良い面と悪い面があって、大抵、“外野”が面白がるのは悪い面。それは、男性との関係、服装、髪型、言葉遣い、など、一挙手一投足が常に監視されてしまうってことです。“外野”たちは、ゴシップネタを報告しあい、そこに正義という名の“悪意”が加えられて伝わっていってしまうの。

 これって、倫理的にどうなのよ? 上司としてどうなのよ? 職業人としてどうなのよ? 責任とってないでしょ? といった具合にね。

 あと、世の中には「○」を利用したがる人もいる。