橋本治 「いとも優雅な意地悪の教本」

新書のイメージが変わる?

橋本治「いとも優雅な意地悪の教本」集英社刊、760円
橋本治「いとも優雅な意地悪の教本」集英社刊、760円

 書店に行けば歴史を学び直す新書や世界情勢、今後の経済動向について解説する新書がずらりと並んでいますが、「難しそうで手を出せない」という人も多いのではないでしょうか。そんな人にオススメなのが本書です。著者の橋本治さんは小説、評論、エッセーなどを幅広く執筆する他に、「源氏物語」「枕草子」など、古典の現代語訳も手掛けています。そんな橋本さんが古典文学から身近な洋画に至るまで、さまざまな作品の中の「意地悪」に関する描写をユーモアたっぷりに評論した一冊です。

 映画「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープが演じた役を例に挙げて、「彼女は面と向かって人の悪口を言いません」「権力者が目下の人間の悪口を言っているということがバレたら、品性の問題に関わって来ます」「バレないように悪口を言って、そのカーブのし具合が『意地悪』と見えるのです」と、分析。意地悪の基本姿勢は完全犯罪で、堂々と意地悪をすることは優雅な行為だと続けます。

 何気なく読んだり見たりしていた映画や小説を、「意地悪」という観点で見直してみると、また面白いもの。軽いタッチで読み進めた後には「作品のテーマを見抜く」という視点が身に付いているかも。新書は堅苦しいものというイメージが、ガラリと変わるかもしれません。

文/樋口可奈子 書籍写真/スタジオキャスパー イメージ写真/PIXTA

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