好きな音楽ほど癒やし効果は大きい

医師・医学博士 牧野真理子さん
医師・医学博士 牧野真理子さん
東京外国語大学卒業後OLとなり、その後北里大学医学部、メルボルン大学医学部大学院卒業。現在、牧野クリニックにて診療部長。JICAおよびアサヒビール顧問医、東邦大学医学部客員講師、久留米大学医学部非常勤講師なども務める

 一般的にはヒーリングミュージックやクラシック音楽が「癒やしの音楽」というイメージがある。しかし実際には、懐かしいポップスや好きな音楽ほど心に沁みることもある。音楽と癒やしにはどのような関係があるのだろうか。

 そこで、音楽が心身に与える影響について長年研究を続けている牧野クリニックの心療内科医、牧野真理子さんに話を聞いてみた。

 牧野さんは、「音楽療法には、今ここで自分が聴きたい曲が一番心身に効果があるという原理があります」と説明する。牧野さんは約500人を対象に「好きな曲」「用意されたクラシック」を聴いてもらう実験をしたことがある。その際、心身への効果を比較した結果、自分で選んだ曲のほうがはるかに効果が大きかったという。



体温上昇、呼吸の安定効果も

■気分状態変化
■気分状態変化
心理テスト(POMS)を使用した試聴実験より(健康な女性29名)。CD試聴後は、緊張が緩和、抑うつ感減少、怒りは落ち着き、活気が上昇し、疲労感が軽減しています
■クロモグラニンA 動態
■クロモグラニンA 動態
値は、CD試聴前5.297pmol/mL、試聴中4.31pmol/mL、試聴後1.975pmol/mLと次第に減少。この結果から、CD試聴により心身ともにリラックス効果が得られることが分かりました

 音楽がもたらす効果は、心だけでなく体にも変化をもたらすことにも注目したい。

 試聴実験でもその変化は顕著にみられる。「呼吸や血圧が安定し、イミュノグロブリンが活性化して免疫機能が高まります。さらにα帯域の脳波が増加し、リラックス感が得られ、脳が気持ち良い状態になります。末梢皮膚温も上昇し、ぽかぽかしてきます」と牧野さんは言う。

 上記の「気分状態変化」のグラフで示しているように、音楽の試聴後は、疲労感やイライラ、不安や緊張感を軽減させ、くよくよしなくなる。また、ノイズのない高音質の方が、心の安定感が得られるという。