読書の秋。本の街といえば、東京・神保町。古書店と昔ながらの喫茶店が点在するイメージがありますが、新しいスポットも増えています。心ゆくまで読書したり、ときには集中して仕事したり。本がつくり出す独特の空間を多様に楽しめるおすすめスポットを紹介します。

壁一面を埋めつくす岩波の本たち。読んだことのある本が何冊探せる?
壁一面を埋めつくす岩波の本たち。読んだことのある本が何冊探せる?

 神保町ブックセンターwith Iwanami Books(以下、「神保町ブックセンター」)は、書店とカフェとコワーキングスペースが一体化した3フロアにわたる複合型空間です。地下鉄「神保町」駅から徒歩1分、神保町交差点すぐそばと絶好のロケーション。ここは岩波書店創業の地で、2016年までは神保町のランドマーク的存在だった岩波ブックセンターがあった場所でした。

 今年4月にオープンした神保町ブックセンターは、書店の枠にとどまらず、本を通して人と人をつなぐ「本と人との交流拠点」なのだそうです。

 書店巡りの休憩スポットとして利用するもよし、岩波の書籍を探すもよし。腰を落ち着けて仕事や読書に没頭できそうな書斎のようなスペースも用意されています。

神保町交差点にほど近く、本の街巡りには絶好のロケーション 写真/大崎百紀
神保町交差点にほど近く、本の街巡りには絶好のロケーション 写真/大崎百紀

 平日の午前11時前、既に店内には4~5組の先客が思い思いに本を読んだり、コーヒーを飲んだり。42席の店内はゆったりして、中央の細長いグリーンのソファは座り心地もよく、広々としていて落ち着けます。木目を生かしたインテリアの一部には、旧岩波ブックセンター時代に使っていた書棚を再利用しているそうです。

メニュー表も岩波文庫そっくり

 何と言っても圧巻は、壁一面を岩波文庫や岩波新書が埋め尽くす書棚です。ピンクの帯は海外文学、緑の帯は日本文学……。昔読んだ本を見つけて、手に取ってみると懐かしさでいっぱいに。入口には岩波書店以外の書籍も一部置いてはいるものの、店内のほとんどが岩波の本、約9000点がそろいます。

 そして、「神保町ブックセンターの楽しみ方」というかわいいイラストを発見。

写真/大崎百紀
写真/大崎百紀

 「飲むだけOK、買うだけOK、読むだけOK、持ち込みOK」とあります。楽しい!

 本は必ずしもジャンル別に収蔵されているのではなく、例えば児童書は店内数カ所に配されていて目を引きます。「おさるのジョージ」のシリーズの後ろには、夏目漱石の名作、「こころ」の自筆原稿のレプリカが飾られています。価格は22万円。

 岩波書店は「こころ」をはじめ、漱石の作品を数多く出版しました。漱石といえば、生誕150周年を記念して昨年9月24日に、「漱石山房記念館」が生誕の地・新宿区に開館し、もうすぐ1周年。神保町歩きと合わせて訪ねてみるのもいいでしょう。

 さて、カフェメニューが充実していることも店の魅力の一つ。コーヒーはチョコレートやナッツのような香ばしさが特徴の「四六判ブレンド」と、柑橘系の爽やかな酸味と黒糖のような甘さが特徴の「文庫ブレンド」の2種類。ともに、ホットもアイスも450円。そして極め付きが、限定10食の「神保町ブックセンターサンド」(1500円)です。今日のサンドは、オマールエビたっぷりのオマールロール。レモン風味のクリームドレッシングとバルサミコソースがアクセントのぜいたくなサンドイッチです。ランチタイムには、ドリンクがお代わり自由になります。

限定10食のサンドイッチはスープ付き。ランチタイムはドリンクのお代わり自由
限定10食のサンドイッチはスープ付き。ランチタイムはドリンクのお代わり自由

 ちなみに、カフェのメニュー表は、岩波文庫そっくり! よく見ると、最後のページには「2018年4月11日 第1刷発行」とオープンに合わせた奥付まで、リアルです。

リアルな岩波文庫の顔をしたメニューがかわいい
リアルな岩波文庫の顔をしたメニューがかわいい

 カフェにはビールやウイスキーなどのアルコール類もあります。平日の夜は、仕事帰りの女性たちが1杯飲みに訪れるとか。

 せっかくなので、このままカフェで原稿を書こうかなと思ってパソコンを取り出したものの、あまりの心地よさにちょっとのんびりしてしまいました。がっつり仕事をしたい、という人には別のスペースが……。