高殿 円 「政略結婚」

与えられた運命に立ち向かう強さ

高殿 円 「政略結婚」
高殿 円 「政略結婚」

 次に紹介するのは、江戸末期、明治から大正、昭和と、異なる時代を生きた3人の女性を描いた歴史小説「政略結婚」です。タイトルは「政略結婚」ではありますが、親が決めた結婚を通して自分の生きる意味を見つける女性もいれば、結婚相手を自分で選ぶ女性、そして結婚しない人生を選ぶ女性もいます。

 藩主の娘として生まれ、親が選んだ相手と結婚した勇(いさ)は、流行病であっけなく亡くなる人も多かった時代に、養子縁組に奔走し必死に家を守ろうとします。華族の娘ながら外国暮らしが長く、日本文化になじめない万里子は、語学力と持ち前のバイタリティーを生かし、日本の伝統芸能を海外にも広げようと奮闘。そして、華族という肩書きを持つものの、恐慌で財産を失い、舞台女優として生計を立てながら自分の足で立ち上がろうとする花音子。

 120年の歴史の中で女性の生きざまがこうも変わったということを、結婚という視点から切り取ることもできますが、あえて「お仕事小説」として捉えるのも面白いでしょう。特に2章目の「プリンセス・クタニ」の主人公・万里子の大胆な発想は、働き女子のヒントや励みになること間違いなしです。日本の陶磁器を海外に広めるために、万里子はこれまで誰も気付かなかった「ある分野」への進出を思い付きます。その答えは、本書を読んで確かめてみてください。

Amazonで買う

こちらもおすすめ
大和和紀 「ヨコハマ物語」
大和和紀 「ヨコハマ物語」

 この小説が好きになったという人には、大和和紀さんのマンガ「ヨコハマ物語」がおすすめ。舞台は明治初期、ヒロインは横浜の貿易商の娘・万里子と、家族を亡くして万里子の遊び相手として引き取られてきた卯野。身分の違う二人はあっという間に親友になり、いつか海の向こうに行くことを夢見て英語の勉強に励みます。しかし、万里子の父の急死により事態は一変。万里子は政略結婚させられ、卯野は一人でアメリカに旅立ちます。時代や運命に翻弄されながらも、仕事や結婚などそれぞれの人生を切り開いていく二人の姿に注目です。

Amazonで買う