あなたは一人で堂々と外食を楽しむことができますか? 都内で働く20~50代を取材すると、「実は一人でお店に入るのが苦手」と答える人が多いといいます。おひとりさまを満喫している女子が増えた一方で、働く女子が「ひとり外食」へのハードルを感じるのはなぜ? どうすればもっと自由に楽しめるの? 書籍『ひとり外食術』を担当し、外食トレンドに詳しい日経レストラン 三橋英之前編集長が、働く女子が「ひとり外食」を楽しむヒントについて紹介します。

 ドラマ「孤独のグルメ」が女性から支持され、女の「ひとり外飲みをテーマにしたマンガが人気を博する。女性が飲食店に一人で入り、食事やお酒を楽しむのはすっかり普通のことになった……ような気がしていた。

 だが、現実は少し違うようだ。筆者は、『ひとり外食術』(弊社刊)という書籍の出版に当って、都内で働く数多くの20代~50代男女にひとり外食事情を取材した。そこで何度も耳にしたのが「実は一人でお店に入るのが苦手なんです」という告白だった。

おひとりさま女子は増えたが、ひとり外食女子は増えていない

 筆者がよく利用する居酒屋や小料理店、焼鳥店などには確かに女性一人客が増えた。その一方で、「絶対無理」とひとり外食に強い拒絶を口にする女性も少なくなかった。アサヒビールグループホールディングスお客様生活文化研究所の調べ(調査対象は全国の20歳以上の男女)によると、一人の外食(ディナー)が「できない」あるいは「抵抗がある」と答えた女性は半数を超え、ひとり外食が「大好き」「まあまあ好き」という回答は10%強にとどまっている。「おひとりさま女子」は言葉としては定着したが、実際のところ、気軽に一人で外食を楽しめる女性は一握りに過ぎない

 なぜ、大人の女が一人で店に入れないのか。取材の中で最も多かったのが「他の客の目が気になる」という声。それに「一人だと何をしていいのか分からない」という声が続いた。

他人から、「ひとり外食」=「寂しい」と思われるとは限らない

 他の客の目が気になる。これを掘り下げて聞くと「一緒に食事をする友達や恋人もいない寂しい女と思われそう」という答えが返ってきた。これは「一人で外食をするような女性は寂しいに違いない」という自らの認識の投影だ。

 日常的に一人で外食を楽しむ女性たちは、一人で飲食店に入ってくる女性を見ても「同士発見」くらいにしか思わない。取材をしたひとり外食好きの女性たちは総じて、友人たちとの会食も多かった。会食も楽しいが、一人で好きなものを好きなときに好きなように食べるのも楽しい。2つを上手に使い分ける女性たちにとって「ひとり外食」と「寂しさ」は最初から結びついていない。

 男性の目にも、少なくとも筆者は小料理店やバーなどに一人颯爽と入ってくる女性に自立した格好良さは感じても、寂しさを感じることはない。先入観に囚われず、ひとり外食の至福の時間を多くの働く女性に楽しんでもらいたい。そこには仕事や家庭などのしがらみから離れ、おいしい料理と酒で自分を満たす幸福な時間が待っている。