ひとり外食に向くお店は、コの字型カウンター主体の居酒屋、小料理店

 では、どんな店でどんな時間を過ごせばいいか。取材をもとに、働く女性のためひとり外食術をお伝えしよう。

 女性のひとり外食に何より大事なのは店選びだ。男なら、オジさんだらけの立ち飲み屋でも、脂っこい煙に燻されるモツ焼き屋でもよかろうが、ひとり外食初心者の女性が最初から冒険する必要はないだろう。

イメージ写真/PIXTA
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 ひとり外食に向いているのは何と言ってもカウンター主体の店だ。カウンター割烹、個人経営の小さな居酒屋や小料理店、寿司、天ぷら、串揚げ、焼鳥そしてダイニングバーやバーといったお店である。料理人の鮮やかな仕事に見惚れながら、出来立てを味わう。そしてカウンター越しに大将や女将、料理人と言葉を交わすのは一人外食の醍醐味。カウンターの店というのは基本的に一人か二人、多くてもせいぜい三人までで利用する店であり、一人客が悪目立ちする心配はなく、ゆっくり落ち着いた時間を過ごせる。

 特にコの字型カウンターの居酒屋や小料理店は、ひとり客に最適な店といえる。コの字型カウンターは、その構造上どこに座っても他の客の顔が見える。慣れない人にとっては、常に誰かに見られている感じで落ち着かないかもしれないが、この見られている感じが客にほどよい抑制を促す。客全員が店内空間を共有し、店の雰囲気を作っているという意識が生まれ、騒ぎすぎ、酔いすぎにブレーキをかけるため、女性も安心して飲食できる。

安心保証の長年営業を続けているお店 常連客がいたらどうする?

 その上で、長年営業を続けている店をおススメする。新規開店した飲食店が5年以内に廃業する確率は30%強。競争の激しい外食業界において、長年にわたって営業を続けているのはそれだけで優良店の証だ。

 もっとも、長年続く店には間違いなく常連客がいる。そして常連の存在は、初めての客にとっては少々厄介に感じられるかもしれない。「一見客は疎外されるのでは」という心配だ。だが、店を愛する常連客というのは、初めての客にもその店を気に入ってもらいたいという気持ちを持っている。「この店初めて? ここはね、魚料理がおいしいよ。ねえ、大将、今日のおススメは?」などと常連客が店との間を取り持ってくれることも珍しくない。

 店員や他の客との交流も一人外食の楽しみのひとつ。年齢も仕事も人生経験も全く異なる人たちとのゆるやかな交流は、家と仕事場以外に心地よいサードプレイス(第三の居場所)を持つことにつながり、視野を広げてくれる。

 でも、必要以上に常連客に絡まれるのはわずらわしい。そんな場合も、長年続いている店は安心だ。店から客が離れる原因は、まずい、高い、サービスが悪いとともに、客層が悪いというのがある。「あの客が来るから、あの店にはいかない」というのを店は怖れる。長年多くの客に愛されている店というのは、他の客を不快にする客を正しく教育するか出入り禁止にしている。隣の客がうるさく話しかけてきてわずらわしいなら、カウンターの中の店員に困った顔を見せれば、上手にとりなしてくれるはずだ。

文/三橋英之、写真/PIXTA

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