【質問3】影響を受けた本を教えてください

【回答】「一日一生」「花さき山」です

 郵便不正事件で拘置所にいた半年間は、一日中本が読める環境でした。差し入れの本もあって、自分が読まないような本を読めたのが面白い経験でしたね。その時に助けられたのが「一日一生」と「花さき山」の2冊です。私を心配してくれている人たちが考えに考えて選んだ本だと思うのですが、すごく助けられました。

 「一日一生」には、朝起きて夜眠ると一生が終わり、明日からまた別の一生が始まるという考え方が書かれています。20日間の取り調べがあった時、「20日って長いよな、どこかで心が折れるんじゃないかな。否認しているからずっと拘留されるかもしれない」と、苦しみが永遠に続くような気持ちになっていました。そんな中で読んで、「今日一日を頑張るだけでいいんだ」と思ったら、ものすごく楽になったんです。苦しみがいつ終わるか分からないのはつらいんですよね。でも、「明日はどうなるか分からないけど、今日一日だけ頑張ってみよう」と思ったらびっくりするくらい楽になって、すごく救われました。

「今日一日だけ頑張ってみよう」という気持ちで楽になれたといいます
「今日一日だけ頑張ってみよう」という気持ちで楽になれたといいます

 「花さき山」は、人間が一ついいことをすると花さき山に花が一輪咲くという話です。拘置所で読んだので、最初は「閉じ込められているんだから、いいことなんかできないよな」と思っていました。でも、主人公の貧しい女の子が、「妹が着物を買ってもらえるように」と、自分の着物が欲しい気持ちを我慢した瞬間に、花さき山に花が咲く場面を読んで、その時自分ができることをすればいいのだと気付きました。それなら、家族に心配をかけないように元気でいるとか、拘置所にいてもできることがあるかもしれないと思い、すごく助けられたんです。