仕事で輝けなんて、余計なお世話だね

「いろんな活動をしているなかの一つが主婦、みたいな生き方をしてみては」
「いろんな活動をしているなかの一つが主婦、みたいな生き方をしてみては」

 「働く」というとどうしても「生きがい」やら「輝ける場所」やらって考えがちですけど、正直、お金が手に入ればそんなのどうだっていいですからね(笑)。生きていけるだけのお金があればいいだけで、仕事で輝かなきゃなんて思う必要ないんです。

 就職や転職ってなると脅迫のように自己実現とかやりがいとかって単語が出てきますけど、そんなものは仕事だけで達成するものではないし、働いている時、ごくたまーにそんなことが感じられたら万々歳くらいでいいんじゃないでしょうか。

 本題とそれていきますけど、そこがまだ女にとっての仕事がオプションだと思うところでもあって。

 「働かなくてもいいのに働いているんだから、キラキラ輝く仕事じゃなきゃ!」みたいな価値観って私が大学生だった25年前とかの話で、今はとにかく働かなきゃ食えない時代になっちゃってるにもかかわらず、一部のメディアや親の価値観はいまだに「働く女性はすてきだ!」だったりする。生きるための仕事なんて、すてきでも何でもなく、日常だわ。口を酸っぱくして言いますけど、別に輝くのは職場じゃなくたっていいですからね。女性が輝く社会より、男も女も輝かなくても安心して生きていける社会のほうがずっといいよ。

 それに、会社に就職することだけが仕事じゃないですよね。今は複数の仕事を同時並行的にやっている人も増えてきてるし、一つの組織や同じ場所に属したり居続ける必要もなくなってきている。

 働き方が昔みたいに会社に人生を捧げるスタイルじゃなくなっているのと同じように、主婦像も、家庭に入って夫と子どもに人生を捧げるという昔のスタイルから、いろんな活動をしているなかの一つが主婦、みたいな生き方が普通になってきてるんじゃないでしょうか。

資産家と結婚した場合のみ、本気の専業主婦ができるでしょう

 あと専業主婦と働いている女性って、互いにいがみ合ったりして、不幸なことに分断されてしまうことが多いですよね。それって「仕事 or 家庭」と二者択一を自分に迫るような気持ちがまだみんなの中にあって、選んでしまったら後に引けないから、「私のほうが正しい」と互いが主張し合うことによって起きているのではないでしょうか。

 でも本当はそうじゃなくて、人生のフェーズによってバリバリ働く時期もあれば、仕事をセーブして専業主婦になる時期もある。そうやって使い分けできるようになるのが一番いいですよね。

 理想の世の中は、男も女も働くときもあれば、働かないときもある。それで暮らしていける社会。辞めたいと思ったときは仕事を辞め、戻りたいときは戻れるように労働市場の流動性を高め、仕事に人生を合わせるんじゃなくて、人生の変化に仕事を合わせることができるように。だって誰の人生も何が起きるか分からないから。

 専業主婦願望がある方は、もしも働かなくちゃいけなくなったら? と常に想定して、ちゃんと手を打っておきましょう。だから結婚前にある程度キャリアを積んでおくことは大事ですね。

 ただし、桁外れの資産家と結婚できたら話は別です。夫が病気をしても治療費や生活費に困ることもないでしょうし、離婚や死別したとしても財産分与や慰謝料、遺産相続などがあるでしょう。なのでもしその線を狙うのであれば、法律と資産運用についてしっかり勉強しておきましょうね。

 私は、飛行機で隣の席に乗り合わせた資産家が「楽しかったから鉱山1個あげるよ!」とか言ってくれないかなと夢想しつつ、出稼ぎ大黒柱として粛々と働きます。

聞き手・文/小泉なつみ 写真/稲垣純也