ネットの世界できれいに生きていくことは不可能

 私の炎上初体験は、18歳のときです。「2ちゃんねる」のようなネットコミュニティーに入るには、「最低半年間ROM(ロム)れ」という暗黙のルールがあるそうです。「ROM」とは掲示板などに書き込まずただ見ているだけの状態を指しているんですが、ROMることでそこでの空気感や専門用語、人間関係なんかが見えてきて、そこから初めて発言できる立場になれる、ということらしいんですね。

 でも、当時ネット初心者だった私はネットをROMる期間を一切持つことなく、ある日突然、友達に話しかけるような感じでブログを始めてしまって。さらにそこで顔写真を掲載していたことが物議を醸し、私の炎上初体験となりました。

 顔を出すだけで「うぬぼれている」とか「ブスが顔をさらすな」とかたたかれて、「ブスなのに顔を出してすみませんでした」と謝ったら「その程度の中途半端な顔でブスと言うなんて本当のブスに失礼だ」とまた燃えて、もうわけが分からなかったんですが、そのとき悟ったのが、私が18年間現実世界で使ってきたこの顔を、ネットに出したくらいで燃えるんだったら、ここでキレイに生きていくことはできないってことでした。だったらもう、自分を偽ったり作ったりするのはやめようと思ったんです。

当事者のフリをして炎上を炊き付ける「正義の代理人」

 それから12年間、幾度となく炎上を体験してきましたが、当時から今まで、燃やしに来るタイプは決まっています。「正義の代理人」が一番の焚き付け役です。

 「正義の代理人」とは、「自分が不愉快な思いをした」と言ってくる人ではなく、「あなたの発言で傷付く人がいますよ」と、本人ではない、想像上の誰かの気持ちを代弁してアドバイスしてくる人のことです。

 大学時代にキャバクラに体験入店したことを書いて炎上したとき、当事者であるキャバクラで働く女性たちからは「記事面白かったです」とおおむね好意的なコメントをたくさんもらったんですが、男性からは、「あなたの発言を不愉快と感じるキャバ嬢の人もいると思いますよ」というコメントがたくさん来ました。ブログに付くすべての発言をチェックしていましたが、実際にはそんなコメントは一つもありませんでした。「俺が不愉快だ」ではなく、「不愉快に思う人がいると思いますけど」みたいな感じで、コメントしてくるんです。

 また、最近炎上した下のツイートでは、「偏差値40の人に失礼だと思わないんですか」みたいな意見が散見しました。

今年の初めに炎上したはあちゅうさんのつぶやきがコレ
今年の初めに炎上したはあちゅうさんのつぶやきがコレ

 ちなみにこれは「偏差値40状態で理解できるもの」という例えが、それ自体、偏差値を気にして、受験勉強を経て大学に入り、就職した人たちの集団なんだよ君たちは、ということを表していて、自分の生きてきた世界の狭さを実感させる、いい例えだと私は思いました。この言葉はいくらでも柔らかくできたと思いますがあえて「偏差値40」というきつい言葉を使っていたことで、何年たっても私の頭の中に残っているんです。

 この炎上のときも「私は偏差値が低くて頭が悪いので、頭にきました!」っていう人はいなくて、当事者の代弁者のようなフリをして、勝手に想像で怒り始める「正義の代理人」がたくさんいたように感じました。