ダイエットに睡眠が大切な理由とは?

 ダイエットに食事、運動が大切なことは分かりましたが、「睡眠」とは少し意外な気がします。

 「睡眠不足が続くと、油っこいものや甘いものを食べたくなり、過剰なカロリー摂取をしてしまうことが海外の研究で明らかになっています。食欲を抑えるホルモンが減り、食欲を増進するホルモンが増えてしまいます。反対に良質な睡眠を取れれば、成長ホルモンの働きにより眠るだけで300キロカロリー分もの脂肪を燃焼できるんですよ」(細川さん)

 寝ているだけで300キロカロリー! ただ、日本女性の睡眠時間は世界的に見ても短く、細川さんたちが調査をした「まるのうち保健室」でも平均5~6時間ほどでした。睡眠の質も悪く、大半が熟睡感に不満足だったそうです。

 また、睡眠の質を左右するホルモン・メラトニンは朝日を浴びると分泌されるホルモン・セロトニンが元となってつくられますが、セロトニンの95%は腸で作られます。実は、便秘のように腸内環境が悪化することで、睡眠の質が低下することが報告されています(※1)。日本の女性は腸内環境を整える食物繊維の摂取量が低く、2016年の調査では95%の女性が不足していました。他にもコロンビア大学の研究によると、睡眠の質が悪く、不定愁訴が多い人は飽和脂肪酸(生クリームや肉の脂身部分)、ショ糖と精白された炭水化物の摂取量が多く、食物繊維の摂取量が少なかったことが分かっています(※2)

※1 :小野 茂之 et al. 東京圏の成人女性を対象とした便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査: 女性心身医学 Vol. 10 (2005) No. 2 p. 67-75
※2:Journal of Clinical Sleep Medicine/http://dx.doi.org/10.5664/jcsm.5384

睡眠の質と食生活
睡眠の質と食生活
睡眠時間が短くても不定愁訴が少ない人たちは睡眠の質が高い可能性があると想定し、不定愁訴が3個以下と4個以上で食生活にどのような違いがあるかを調査した グラフデータ出典/2016年度 まるのうち保健室報告書

 「なかなか自炊ができず、食物繊維を取るのが難しい人は豆乳やアーモンドミルク、シリアルなどから取るとよいですね。カフェインも取り過ぎると睡眠の質を低下させるので、コーヒー、紅茶なら1日2杯まで、玉露なら1杯までに抑えるようにしましょう」(細川さん)

30歳を過ぎたら体重計よりも体組成計に乗る習慣を!

 そして、「ダイエットが自分にとって必要か」を見極めることも大切です。

 「BMIが25以上、体脂肪率が30%を超えているなら、ダイエットしたほうがよいですね。体脂肪率が30%を超えると排卵障害が起こりやすくなるなど、リスクが高まります。逆にBMIが18.5、体脂肪率17%を下回っていても痩せたいと思うのは、摂食障害の心配があります。やみくもに体重を減らすのではなく、自分が健康体かどうか、客観視することが必要です」(細川さん)

 そこで細川さんがおすすめするのが、体組成計。体重だけでなく、BMIや体脂肪率、筋肉量を把握することができるからです。

 「女性は生理前、生理後で1~3キログラムほど体重が増減します。体重の増減に一喜一憂するよりも、自分の体脂肪率や筋肉量を把握しておきましょう。特に30代を超えると体重は変わらないのに筋肉量が落ち、体脂肪に変わっている場合があるので要注意ですよ」(細川さん)

 食事、運動、睡眠をおろそかにせず、体重計ではなく体組成計に乗るのが大人の女性のダイエットといえそうです。

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 これまで全10回にわたって、正しい食生活について、栄養や予防医療の視点から具体的に解説してきました。日々忙しくしていると簡略化しがちな食習慣。末永く健やかに働き続けていくためにも、できることから見直していきたいものですね。

 ぜひ、バックナンバーも参考にしてみてください。
 ■働く女性のための正しい食生活

文/三浦香代子 イラスト/渡辺あやね グラフデータ出典/Will Conscious Marunouchi「まるのうち保健室