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妻の浮気相手はコイツ!? 疑った男性の性器を切断――異常行動の心理とは

2015年8月22日

常軌を逸した行為の裏にある心理に迫る

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妻との浮気の疑いのある男性の性器を切断! 常軌を逸した行為の裏にある心理とは?

 8月13日、元ボクサーの法曹を目指す大学院生が、弁護士の男性を殴って気絶させたうえに、男性器を切断するという事件が起こりました。場所は港区虎ノ門の弁護士事務所が入居するビルのトイレで、加害者の大学院生は切り取った男性器をトイレに流したと言われています。

 加害者は自分の妻と被害者弁護士の不倫を疑っていたとのことですが、動機がどうであれ、異常性の高い事件と言わざるを得ません。そこで、大学院生がこのように常軌を逸した行動をとった心理的要因について、神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科教授の杉山崇先生に話を聞きました。

猟奇的な犯行が示唆するもの

 報道によれば、加害者の妻は、事件のあった弁護士事務所に勤務していたそうです。大学院生の自宅周辺でも夫婦で言い争う様子が漏れ聞こえていたようです。

 妻の不倫を疑えば、男性としては嫉妬に狂うのは当然です。これは生殖にまつわる人の本能と言えます。しかし、この事件は単なる嫉妬に留まらない、別の何かも加害者を凶行に駆り立てたように見えます。

 心理学の知見からは、大学院生という微妙な立場、そして法曹界(弁護士や裁判官、検察官など)を目指す身であると同時に、怒りの対象が弁護士であったという関係性が強く関わっていたように思えます。この事件の背景を考えてみましょう。

加害者の怒り自体は理解できる

 一般に、異性に対する嫉妬には「配偶者防衛」の心理が働いていると言われています。配偶者防衛とは、男性は妻の肉体的な不貞に対し、また女性は育児への協力が疎かにならないように夫の感情的な不貞に対して過敏になるというものです。これは自らの子孫を確実に残すために獲得した、一種の本能であると考えられています。

 被害者弁護士と大学院生の妻との関係が、単なる上司・部下の関係でなかったとしたら、大学院生が怒り狂うことは当然です。妻だけでなく被害者弁護士にも攻撃的になることは、心理としてはあり得ることでしょう。事件の当日、三者は話し合いの場を設けるために弁護士事務所に集まっていたとされています。

男性としての「ランキング」

 ここで、「元ボクサーであり、法曹を目指す大学院生」という加害者の立場と、被害者である弁護士の関係性を考えてみましょう。

 一方は国に認定された法曹界の一員。一方は法曹を希望する若輩者です。どの社会にも、どの業界にも社会的ランキングがあります。もちろん、ランキングがすべてではありませんし、ランキングは固定されたものではなく、個々人ごとの逆転も頻繁にあります。

 しかし、社会がランクに沿って動いているのも事実です。仕事はより実績があって確実にいい仕事をしてくれる人=ランキング上位の人に集まりますし、そうでない人=ランキング下位の人には集まりません。

 ランキングを参考に適材適所を考慮することは、社会を円滑に回す一つの手段になっているのです。その是非はともかく、一つの現実として世の中にはランキング意識が横たわっているとご理解ください。

 これを今回の事件に当てはめると、法曹という社会のランキングで見ると、大学院生にとっては残酷な現実があります。法曹の一希望者に過ぎない彼は、これから弁護士になれるかどうかも未定であり、その世界では最低ランク、いやランクキング以前の立場なのです。法曹界における地位という意味で、被害弁護士とは天地の差があります。

最悪の選択は復讐を怖れての行動?

 ここで、もう一つの生殖に関わる本能が発動します。社会的ランキングがより上位のほうが配偶者獲得に有利という原則です。特に、男性は配偶者獲得競争が激しいので、配偶者防衛だけでなく、社会の中でより優位に立ちたい、より上位に上りたいという気持ちが強く出ます。

 大学院生の場合は、法曹というランキングでは圧倒的に不利です。そこで、競争に勝つには、「別のランキング」で優位に立とうと考えます。ここまでは、人の本能としてはギリギリあり得るかもしれません。

 しかし、彼は禁断の方法を選んでしまいました。格闘家やアスリートは、一般人よりも体力面で圧倒的に有利です。元ボクサーである彼は、被害者弁護士を力ずくで打ちのめすという禁じ手を使って自分の優位性を見せつけたのです。法曹を目指す身という立場も忘れて……。

 問題はその後です。一般的には、相手が強大でればあるほど復讐が怖くなります。復讐を受けないためには、自分が優位なうちに徹底的にせん滅するほかありません。それが、大学院生の場合は性器の切断という凶行につながったと考えられます。

 命までは取らなかったのは、男性としての優位性さえ示せればいい、という大学院生の最後の良心が働いたのかもしれません。とはいえ、被害弁護士の男性としての機能はまさにせん滅されたと言えるでしょう。

この事件の持つ意味

 生殖に関わる本能は、時に男性を暴力的に導きます。しかし、この事件でこの加害者が禁断の選択をしてしまったことは、本能だけでは説明できません。加害者の精神鑑定を含めて、多面的に事件の背景を探ることが次の事件の抑止力になるでしょう。

執筆者プロフィール
杉山 崇
神奈川大学人間科学部/大学院人間科学研究科 教授
心理相談センター所長・教育支援センター副所長
臨床心理士・一級キャリアコンサルティング技能士
公益社団法人日本心理学会代議員
主な著書
好評発売中『入門! 産業社会心理学』(北樹出版)
2015年9月『読むだけで、人づきあいがうまくなる(仮)』(サンマーク出版)発売予定。

(※「Mocosuku2015年08月16日付の記事を転載)

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