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先端技術で見えてきた脳の秘密

2014年2月5日

透明な脳、光るニューロン――脳を可視化する最先端技術に注目集まる

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脳の回路を色分けしたMRI画像。ピンクとオレンジの回路は、言語機能に不可欠な信号を伝達する。(Van Wedeen and L. L. Wald, Martinos Center for Biomedical Imaging, Human Connectome Project/National Geographic)

 脳研究の最先端では、さまざまな試みが行われている。ニューロン(神経細胞)の微細な構造を明らかにする研究もあれば、無数のニューロンが何千種類ものタンパク質をどのように生産して利用するかを調べて、脳のマップを作ろうという取り組みも進む。

 活動中の脳を可視化できるようになれば、機能不全も突きとめやすくなる。健常者の脳と自閉症者の脳、統合失調症やアルツハイマー病の患者の脳の構造的な違いを探る研究も始まっている。脳の構造と機能の関係がより詳しくわかってくれば、病気の診断や発症メカニズムの解明につながる可能性がある。

脳を見るために脳を消す

 脳を可視化する最先端技術の中でも、特に意外なのは、米スタンフォード大学の神経科学者で精神科医でもあるカール・ダイセロスの研究チームが開発した手法だろう。脳を見るために脳を消す――そんな逆転の発想に基づいたものだ。

 ダイセロスの研究室を訪ねると、学生の一人が、ビーカーを5、6個並べた台の前に案内してくれた。彼女はその一つを手に取って、底に沈んでいるマウスの脳を指さした。よく見ないと、どこにあるのかわからない。脳はブドウの粒ほどの大きさで、ほとんどガラス玉のように透明だった。

 人間やマウスの脳は不透明だが、それは脳の本体であるニューロンが、脂肪など光を通さない物質に包まれているためだ。だからそうした不透明な物質を取り除いて透明な標本を作れば、脳を切り刻まなくても、脳内のニューロンの位置やつながりを調べられる。ダイセロスは研究員のグァンフン・チュンとともに、不透明な物質を取り除き、透明な分子だけを残した標本を作製する技術を開発した。

 この技術でマウスの脳を透明にしたあと、蛍光物質を使って特定の種類のニューロンを色づけし、たとえば脳の離れた領域を結ぶ回路を観察することができる。色づけする対象を変えれば、さまざまな種類のニューロンの位置や構造を可視化できる。「配線をばらさなくても、配線図がわかるわけです」とダイセロスは説明してくれた。

「CLARITY(透明性)」と呼ばれるこの技術は、脳科学者たちに衝撃を与えた。  ゆくゆくは人間の脳の透明サンプルも作製したいとダイセロスは考えているが、人間の脳はマウスの脳の3000倍も大きいとあって、技術的にはるかに難しい。いずれはCLARITYが自閉症やうつ病などの診断に役立つ可能性はあるが、そこまでの道のりはまだ遠い。このためダイセロスは、現時点では安易な期待はもたないように肝に銘じているという。

(※ナショナル ジオグラフィック2014年2月号特集「先端技術で見えた脳の秘密」より)

ナショナル ジオグラフィック日本版 2014年2月号

最先端の技術で、人間の脳の秘密が見えてきました。特集「脳の秘密」では、脳内を可視化する技術や思考をセンサーで取り出す試みなど、脳研究の最前線をレポートします。このほか、ユーコンにゴールドラッシュ再来/フィレンツェ 花の大聖堂/インドの祭りと群衆の“効能”/愛しのわが街/の特集5本を掲載。Webサイトでは、ダイジェスト記事のほかフォトギャラリーや動画も!
http://nationalgeographic.jp/nng/
article/20140123/381098/

*記事がご覧いただけるのは4月30日までです。

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