米・サンフランシスコで開催された情報技術(IT)カンファレスに、米ヤフーの新CEO(最高経営責任者)、マリッサ・メイヤー氏(37歳)が妊婦姿で登場した。

同女氏は、もと米グーグルの最高幹部の一人で、女性エンジニアから少人数の幹部で構成されるグーグル経営委員会のメンバーにまで上り詰めた人物だ。1999年に創業間もないグーグルに20番目の社員として入社、ネット検索、地図、位置情報サービスなどの技術開発や、新製品、新サービスの開発に関わってきた。近年は、記者会見や新製品発表会などのイベントに登場し、グーグルのスポークスパーソン的な役目も務めていた。
その同氏を、経営再建中の米ヤフーが、CEOに大抜擢する形で起用。今後数年間で5900万ドル(約46億円)以上という巨額の報酬総額で、2012年7月17日にヤフーCEOに就任した。
現在、同氏は10月に初めての出産を控える妊婦で、産休も数週間取る予定である。妊娠しながら1万2500人の社員を抱える大手企業のCEOを務める女性というのは、あまり聞いたことのない話だ。女性CEOというだけでもまだ少ないところに加え、その上、妊娠しながら注目企業のCEOを務められるとは、日米の会社経営を巡る環境の違い、社会的違い、仕事と子育て両立の仕方等について考えさせられる。
ちなみに米ヤフーは老舗ネット企業だが、昨今は業績低迷が続いており、同氏採用は、会社立て直しを期待されてのものだ。その重責を念頭に置きつつも、米メディアによると、ヤフーCEO人選委員会では、妊娠中の女性をCEOに迎え入れることに対して懸念の声は上がらなかったとのことだ。新規採用は、あくまでも育児休暇取得を事前に受け入れての会社の決断だ。
メディアに対しても、同氏は移籍時点で妊娠の事実をあらかじめ伝えていたこともあり、企業経営と出産・育児をどう両立していくか疑問視する声はさほど聞かれない。それより、山積みの経営課題をどう解決していくのか、経営手腕を今後、客観的に見極めていこうという見方が、概ね主流のように見受けられる。