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震災後ストレス対策、これからが正念場

2011年6月17日

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 東日本大震災の発生から3カ月が経過し、被災地も少しずつ落ち着きを取り戻しつつある。だが、大正大学准教授で海上保安庁惨事ストレス対策アドバイザーを務める廣川進氏は、「被災者や救援活動に当たった人たちの自殺が、これから増える可能性が高い」と危惧する。被災地に出向き、海保職員のストレスチェックやカウンセリングに携わった廣川氏に、今後のメンタルヘルス対策について聞いた。

大正大学准教授、海上保安庁惨事ストレス対策アドバイザー・廣川進氏。

――そろそろ、被災者の気持ちも落ち着くのではないですか。

廣川:地震・津波のような災害や事故現場で、悲惨な光景を目撃したり自分の職責を果たせなかったと思うことから生じるストレスを、「惨事ストレス」と言います。これを受けると、不眠や悪夢、頭痛や血圧の上昇といった身体の反応、そして恐怖感・不安感などが表れます。1カ月程度で元の状態に戻れば、一過性の正常な反応として、あまり気にする必要はありません。

――1カ月以上続く場合は。

廣川:PTSD(心的外傷後ストレス障害)となった可能性があり、治療が必要になります。被災者であれば自分が生き残ったことへの罪悪感から、救助活動に従事した人の場合は無力感などから、いずれも自責の念を抱き、自殺のリスクが高まります。この点で、PTSDとうつ病は近い関係にあるのです。飲酒で気を紛らわせようとしたり、仮設住宅へ移って一人暮らしになったりすればなおさらのことです。

――今のところ、被災地で自殺者が増えたという話は聞きません。

廣川:大災害の直後には自殺者は増えないものです。半年後ぐらいから増えてきますので、この冬は要注意です。東北の人はがまん強いとか不平不満を口にしないとか言われますが、これはストレスを発散できないということでもあります。その上、今回の惨事ストレスは強烈ですから、危険性はなおさらです。大都市部に比べて精神科医の敷居は高いでしょうし、方言が通じない人には自分の気持ちを話したくないと思うでしょうから、適切な治療を受けにくいという側面もあると考えられます。

復興に伴う格差が要因に

――今後、復興が順調に進めば、自殺者増加のリスクは少なくなるのでは。

廣川:そうはいえません。復興の過程において、被災者の間で格差がつくと思われるからです。就職が決まり、家を建て直す人が出る一方で、収入もなく避難所暮らしを続けざるを得ない人もいるでしょう。後者は、「置き去りにされた」「世間から忘れられた」というネガティブな感情を抱き、自殺に追い込まれかねないのです。

――救援のために働いた人のメンタルヘルスも心配ですね。

廣川:私も、被災地に派遣された自衛隊員、地元の消防団員、自治体職員らの心理状態を心配しています。特に地元の救援者は、悲惨な現場を目にしているのに加え、自宅が津波で流されたり家族が被災するなど、二重に惨事ストレスを被っているからです。PTSDの発症率は5~10%なので、10万人以上派遣された自衛隊員から何人PTSD発症者が出るかを考えると暗然とします。これまで遺体を見た経験も多くはないでしょうし。

――こうした人たちに、どのような対策が必要ですか。

廣川:ストレスが高い状態で長時間働き続けると、脳や心臓の疾患で過労死する危険性が高まります。既に、被災地の会社員や公務員に、過労死が出始めたと報じられています。それを防ぐには、体全体のチェックが大切です。会社などが実施する健康診断をきちんと受診して、「要注意」の項目があったら、日頃は放置している人も、今回だけは精密検査を受けることをお勧めします。会社側も、3月以降の延べ労働時間を把握したり、3、4月の勤務時間がどうだったかを確認したりして、実態を踏まえた綿密な労働時間管理をし、必要に応じてまとまった休暇を取らせるべきでしょう。

「口数が少なくなった」人は要注意

――部下の心の不調を見抜くポイントは。

廣川:管理職の人は、「口数が少なくなった」「昼間ぼんやりしている」といった変化が、部下に表れていないか気に留めてほしいところです。就寝時間や起床時間を尋ねてみるのもいいでしょう。また、食事がきちんと取れているかどうかも重要なバロメーターです。量だけでなく、おいしく感じたかどうかが肝心です。さらに、自分を責めるような言葉を口にしないか、気をつけてください。

――新聞やテレビで震災を“目撃”した人たちは大丈夫ですか。

廣川:阪神大震災は、発生したのが冬の早朝で辺りがまだ暗く、その上、大半が建物の倒壊による圧死や窒息死でした。これに対し、東日本大震災は昼間に発生し、津波が繰り返し襲ってくる様子が鮮明な画像で日本全国に流れました。被災者でなくても、ナイーブな人は影響を受け、体が揺れる感じがしたり、不安な気持ちになったりしています。こうした人は、ゆっくり休息する、好きなことを思い切り楽しむなど、自分なりの気分転換をしてみましょう。また、自分の部下にこういう人がいたら、管理職はそのような症状が出ても不思議はないと話し、安心感を与えるようにしてください。それでも症状が2週間以上続くようだったら、まず、かかりつけの医師を受診するよう勧めていただきたいと思います。

――東日本大震災による惨事ストレスの影響は、いつごろまで続きそうですか。

廣川:発生から1年では収まらないと思います。通常は発生時のストレスが最も大きいのですが、今回は、その後も大きな余震が何度かあったり、福島第一原発の事故が収束していなかったりと、今なお現在進行中の惨事だからです。PTSDの症状が深刻化し、回復も遅れることが危惧されます。

取材・文/井上俊明

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