• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「もしもこうだったら……」空想を広げ、子どもの頃の気持ちを思いだす2冊

2015年2月4日

中島たい子著『心臓異色』、新井素子著『未来へ……』

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

 小学生の頃、近所に同級生の女の子がいなかったわたしは、ほとんど一人で登下校していました。最初は不安で寂しかったのですが、そのうち登下校の時間は、ひたすら空想して遊ぶ時間となりました。

 空想の中で一番気に入っていたのは、いわゆる「どこでもドア」的な空想。

 この先の道を行くと、違う世界に繋がっている、と考えるだけでドキドキと胸が高鳴りました。ある道を抜けると、そこは未来だったり過去だったり……飽きもせず毎日同じ道を行きながら、似たようなことを考えていました。一人の登下校はさながら空想の冒険の時間。やがて小説に出会い、自分の空想よりずっと面白いものがある、と夢中になりました。

 そんな子どもの頃の気持ちを思いだした2冊です。

中島たい子著『心臓異色』(光文社)。

 この本を読んですぐに思い出したのは、星新一の小説。7編のちょっと不思議な物語が収められています。

 『家を盗んだ男』の主人公は大泥棒。スーツを着て仕事をすることから「会社員」と呼ばれています。大泥棒はある日運命の相手と出会い、彼女との結婚を機に泥棒稼業から足を洗う決心をしました。

 二人は家探しを始め、やがて一軒の家に出会います。彼女が気に入ったその家は、かつて自分が泥棒に入った家でした。

 前の持ち主がその家を手放したのには、自分が盗みに入ったことが関わっていると知ります。

 泥棒とは、人から大事な者を奪うこと。彼女という失いたくない存在を得た後で、前の持ち主から家だけでなく、家族の絆を奪ったことに気づいた泥棒は苦悩します。

 表題作『心臓異色』はユーズドの人工心臓を移植したことから、性格や食べ物の好みまで変わってしまいます。そこで前の持ち主を辿っていくことに。

 物に過去があり、記憶がある……というようなSF的な設定ですが、わたし自身も身の回りの愛用品には何か命が宿っているような気がして、なかなか処分できません。

 SFというと現実からかけ離れた物語のように思われるかもしれませんが、物語の中にいるのは基本的に人間。そしてどんなに精巧なロボットが登場しても、やはり人間に似ている。過去も未来もたぶん人の心は変わらない。異色の設定の中で、そうした人間らしい部分に触れると、人間くささが引き立つような気がしました。

この記事をSNSにシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加
Facebookでシェア

Facebookコメント

※Facebookのコメント機能は、Facebookのソーシャルプラグイン機能を用いて実現してい ます。本機能、およびコメントの内容について、日経ウーマンオンラインは一切の責任を負い ません(日経ウーマンオンラインからのコメントを除く)。また、コメントを非表示にしたり、機能を停止することがあります。

コラムのバックナンバー

もっと見る

Profile
中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
関連キーワードから記事を探す
エンタメ人間関係の悩み暮らし方

Topics

CloseUp

WOL Selection

PAGE TOP

ログインしていません。

  • ログイン
  • 無料会員登録

Pickup

Focus

最新刊のご案内

仕事を楽しむ 暮らしを楽しむ日経ウーマン 12月号

もっと健康に、もっと美しく日経ヘルス 12月号

働くママ&パパに役立つウェブマガジン日経DUAL 11月号

一生お金に困らない!お金がどんどん増える本 ミニサイズ新装版

まんがで分かる!やせる食べ方

日経ウーマンオンライン おすすめの本

日経ウーマンオンライン

広告をスキップ