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世界遺産、アンコールからプレアヴィヒアを行く

2015年1月30日

神秘に包まれたアンコール王朝の栄華を訪ねてみると…

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 アンコール周辺の世界遺産の旅。後編は、最大の都城アンコール・トムをスタートに、周辺を散策します。ラストはカンボジアのもう1つの世界遺産、プレアヴィヒアまで足を伸ばしてみました。タイ国境にあるプレアヴィヒアは、一時、国境問題で治安が不安定でしたが、現在は安全地帯。アンコールとはまた異なる眺望が待っています。

王朝最大の都城、アンコール・トムの絢爛

 1辺が約3km四方のほぼ正方形をした都城アンコール・トム。メーンゲートになっている南大門へは、幅113mの環濠を渡る。その橋の欄干は、ナーガ(蛇)と巨像の列でできている。神の世界と人間の世界を結ぶ「虹」を象徴するナーガの胴体を使って、正面の南大門に向かって左ではデヴァター(女神)、右ではアスラ(阿修羅)の巨像が綱引きをしているシーンだという。

 その設定もさることながら、驚くのは、正面の南大門にバイクやトラック、小型バスまでもが次々に吸いこまれていくことだ。ただ積み上げただけの石の下を、振動を伴って車が通る。それでも崩れることのない建築技術にいきなり驚かされる。

両側にはナーガで綱引きをするデヴァターとアスラ。南大門に人も車も吸いこまれていく。
南大門の下部には、3つの頭の象があしらわれている。

 アンコール・トムとは「大きな都市」の意。これまで紹介してきた遺跡の多くが単体の寺院であるのに対し、全部で5つの門を構えるこの都城内には、中央に十文字を描くメーンストリートが走り、中央に仏教寺院のバイヨン、そして主に北西の一角を中心に王宮跡や出陣の際に利用した「象のテラス」や、レリーフで埋め尽くされた「ライ王のテラス」、ヒンズー寺院バプーオンなど、さまざまな建造物が点在している。木造だったがゆえにその姿はもはやないが、その他の場所には多くの民が住み、最盛期には10万人が暮らしたという。まさに大都市だったのだ。

 なぜこれほど広大な都城を造ろうとしたのだろう。それは度重なる隣国チャンパの攻撃に耐えるためだった。1177年にチャンパの侵攻を受け、存亡の危機に陥ったクメール王朝(アンコール王朝)を救ったのはジャヤーヴァルマン7世(在位1181~1220年頃)。王は外敵の襲来から都を守るため、高さ8mの城壁と外周12kmの環濠で囲まれた、巨大な都城アンコール・トムを建設したのだった。

都城の中心に位置するバイヨン。日本国政府の遺跡救済チームなどによる修復も進んでいる。

 その中心にある仏教寺院バイヨンの見どころは、四面塔だ。二重の回廊に囲まれ、高さ45mもの中央祠堂(しどう)をもつバイヨンには、50以上もある塔の4面に人面が彫り込まれているのである。人面の数は180近くに及ぶ。描かれた人面は、観音菩薩ともヒンズーの神とも、王の顔ともいわれる。いずれにせよ、「バイヨンの微笑み」といわれる四面塔に刻まれた尊顔は、どれひとつと同じものはない。微妙に表情が異なる尊顔のせいか、この寺院にいると、あまたの仏や神に見守られているような安心感を覚える。

13世紀末にこの地を訪れた元朝の使節団の記録では、四面塔は金色に輝いていたと書かれている。

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Profile
小野 正惠
小野 正惠(おの・まさえ)
編集プロダクション、エイジャ代表。フリーライターとして、コスモポリタンほか女性誌や朝日新聞、毎日新聞などで執筆。1990年、株式会社エイジャを設立した。旅をメーンに歴史、文化などのテーマで編集・執筆に取り組む。主な作品は、『日本ユネスコ協会連盟 世界遺産年報』のほか、『週刊 ユネスコ世界遺産』『世界遺産夢紀行』『世界遺産検定公式テキストブック』『週刊 京都を歩く』『世界遺産なるほど地図帳』(以上講談社)、『ルネサンス街道の旅』(日経BP社)、『週刊 世界の博物館』『週刊 地球46億年の旅』(以上朝日新聞出版社)、『行って良かった!絶対見たい!世界遺産77』『仏像ワンダーランド』シリーズ(以上JTBパブリッシング)ほか多数。2011年にはアプリ制作会社のリンク・リンクを立ち上げ、世界遺産を中心にしたアプリを制作・販売中。
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