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ため込んできた悩みや苦しみをリセットできる2冊

2015年1月7日

絲山秋子著『離陸』、多和田葉子著『献灯使』

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 新年明けましておめでとうございます。新しい年になると、あらゆることが一新されたように感じます。

 大掃除を済ませ、いるもの、いらないものを仕分けて片付いた部屋で新年を迎えることは、心の整理をすることに繋がるのかもしれません。

 わたしたちは同じような日常を送りながら、いろんなものをため込んでいます。ため込むのは物ばかりじゃない。些細な悩み、大きな問題、嫉妬、ねたみ、そねみ、マイナスの感情を知らず知らずのうちにため込んで、ひとりで落ち込む。そんな習慣は心によくありません。

 ではどうすればよいか。今年はスマホを開くより、本を開きましょう。

 ため込んできた悩みや苦しみをいったんリセットし、まっさらな気持ちになってほしい、そんな願いを込めた二冊を紹介します。

絲山秋子著『離陸』(文藝春秋)。

 国交省で勤める佐藤弘の元に、突然イルベールという黒人があらわれ「女優を探してほしい」と頼まれます。女優とは、かつて弘の恋人だった乃緒(のお)。女優の卵だった彼女はイルベールの元に幼い子どもを残して姿を消しました。

 謎めいた展開、舞台は山奥のダムからパリ、九州へと移り変わっていきます。ミステリーのようでありながら、タイムスリップを思わせる場面に出会うと「SFなのか?」と読者を翻弄しながら物語は進んでいきます。

 中でも印象的なのはタイトル『離陸』について、本書の中ではこんな風に語られます。

 「ぼくらは滑走路に行列をつくって並んでいる。いや、まだ駐機場にいるかもしれない。生きている者は皆、離陸を待っているのだ」

 「離陸」とは飛行機が地上を離れていく瞬間。つまり人が死ぬときのこと。

 「その滑走は悲しみを引きちぎるように加速していって、やがて地上を走ることに耐えられなくなり。ふっと前輪が浮くのだ」

 わたしたちは人の死を見ることは出来ても、自分の死を見ることは出来ない。これから死にゆく人が「死」の世界に行く瞬間を見事にあらわした一節だと思います。

 どことなく浮遊した文体ですが、弘と妹の茜の会話に兄妹らしいユーモアと親しさを感じました。

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Profile
中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
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