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母との今後、私のいま―東小雪さん

2014年10月22日

生きかたは、自分の意思で選びとることができる

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 東小雪さんと大川内麻里さんの母娘関係対談、負の世代間連鎖の恐怖にどう対峙するかなどを語った前編に続き、後編は、東さんがどうやってここまでの回復をなしえたのか、また母とは距離を置いているふたりですが、今後の母との関係をどう考えているのかなどを語りました。

●東 小雪(ひがし・こゆき)
1985年、石川県金沢市生まれ。元宝塚歌劇団花組男役あうら真輝。2010年秋より芸名とセクシュアリティをカミングアウトしてLGBT支援に携わる。2013年12月、株式会社トロワ・クルールを設立し、テレビ・ラジオ出演、執筆、講演活動やイベント開催などを行っている。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)、『レズビアン的結婚生活』『ふたりのママから、きみたちへ』(ともにパートナーの増原裕子氏との共著、イースト・プレス)。オンラインサロン「こゆひろサロン」主宰。
ブログ: http://koyuki-higashi.blog.jp
Twitter:@koyuki_higashi

■“置き去りにされた感情”に名前を付けていく

大川内:小雪さんが回復されていった過程をおうかがいしたいです。

東:カウンセリングを通して、性虐待のことをしっかり語っていきました。

 被害に遭ったときには、子どもは、大人と違ってボキャブラリーも少ないですし、受けた被害と、そのときの感情をうまく言語化できないんですよね。親からの行為、恐怖、苦しさ、理不尽さに名前が付けられないんです。

 それが子どもの記憶のなかに残って、そのまま大人になる。そこに苦しみがあるんです。

 カウンセラーの岩本令子さんは、それを“置き去りにされた感情”と呼ばれています。カウンセリングでは、その感情に、名前を付けて言語化していく作業などをしました。回復の過程に、とても大事な作業でしたね。

 性虐待と向き合うのは、フラッシュバックも伴いますし、混乱もするし、怖いことではありました。

 でも私の心の準備が整うまで、岩本さんは待っていてくださいましたし、また向き合おうと決めてからは、圧倒的に寄り添ってくださった。だから、安心して向き合っていくことができました。

 心から血を流すような作業です。つらい記憶が、たくさんよみがえります。でも岩本さんが支えてくださるし、導いてくださるから大丈夫だ、と。でないと、向き合うことなどできませんでした。

 おかげで、8年間も飲み続けていた大量の処方薬は必要がなくなったし、健康な心身を取り戻し、働けるようになりました。

■適切な言葉を当てはめることが回復に繋がる

大川内:言語化する作業が大事だったとのことですが、言語の用いかたを誤ると大変なことになると思うんです。

 というのは、私は16歳のときに、大学病院の精神科に入院していたんですが、ある日病室に父が面会にきた。そのとき父を前にした私の様子を見た主治医から、あとでこう聞かれたんですね。「お父さんが病室に入ってきたとき、あなたが3歳児くらいに子ども返りをした。その反応が、ある体験をした子どもに特徴的な反応で……あなた、近親相姦に遭っていたんじゃないの?」。

 記憶を抑圧してしまっていたのもありますが、私はその「近親相姦」という言葉に、反射的に笑って否定してしまったんですね。いま振り返ると、とても悔しいことですが。

 まわりの大人の言葉の誤用によって、SOSを出せなくなる子どももいると思うんです。

東:「近親姦」「性虐待」はあったとしても、子どもに対して「相姦」はありませんからね。だいぶ改善されてきたものの、メディアでもいまだに「近親相姦」という言葉を目にすることがあります。そういった言葉の誤用は、変えていってほしいと思います。

 誤った言葉が、子どもに「自分がいけなかったのではないか」という罪悪感を植えつけますから。

大川内:被害の歪曲化、過小化に繋がりますからね。私は、人からはじめて「君は、虐待を受けて育ったんだね」と、自分の体験をして「虐待」という言葉を用いてもらったときに、あれはそう言っていいことだったんだ、と救われる思いがしました。

東:わかります。「虐待」なんて言葉を当てはめていいのか、自分は「虐待」を受けていたなんて言っていいのかと思ってしまう。

大川内:でも、適切な言葉を当てはめることは、被害を適切に見つめることに繋がるんですよね。

 また性虐待に関して言えば、被害者自身が、自分にも非があったのではという思いかたをさせられてしまうことに残酷さがあると思うのですが、私の場合、特に「挿入を伴わなかったから、私はたいしたことがなかった」「胸を触られたり、見せるよう強要されただけだから、たいしたことがない」「性虐待なんて言ってはいけない」と過小化してしまうんです。

東:挿入を伴うか否かで、被害が軽い、重いが決まるわけではないというのは、性被害において大事な部分です。性虐待に限らず、虐待や母娘関係において「自分の受けたことは、ほかの人と比べて、軽いから。親にも申し訳ないし、虐待なんて言ってはいけない」と思ってしまうこと。これは、被虐待児や元被虐待児が抱え込んでしまう問題のひとつです。

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Profile
大川内 麻里
大川内 麻里(おおかわうち・まり)
1977年、福岡県生まれ。著述家・編集者。自身の被虐待や母娘関係の問題、不登校や高校中退(大検を取得し進学。心理学専攻)、離婚、うつ病などの実体験をもとに活動。
執筆、講演や心理相談のほか、出版やイベントのプロデュースも手掛ける。
naked heart代表。親友である元アイドルのチバレイこと千葉麗子さんとともに、自身のうつ病体験を赤裸々に綴った『チバレイ&マリの壮絶うつトーク~うつ女子ほど、仕事も恋もうまくいく!~』も話題を呼び、多くの女性たちから共感の声が寄せられた。著書に『這い上がるヒント~諦めなかったお笑い芸人30組の生き様』(東邦出版)、『うまくいかない自分から抜け出す方法』(かんき出版)ほか。『相方~ビートたけしとの幸福/ビートきよし 著』(東邦出版)の構成も手掛けた。
*公式サイト:http://naked-heart.jp/ *Twitter&Facebook:OkawauchiMari
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