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幸福論 by アラン

新訳で読むアラン『幸福論』―優柔不断

2014年11月14日

「優柔不断の中にはある種の暴力が潜んでいる」

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 「もう深刻ぶるのはやめてのんきにやろう」と語るフランスの哲学者・アラン。『幸福論』とは、アランが書いた短いエッセーの中から、幸福に関するものを選んでまとめた哲学書です。本連載では、約90年も前に書かれた名著『幸福論』の中から10本を厳選し、新訳でお届けしていきます。アランの考えに触れることで、複雑に見えた困難や悩みが形をかえたり、目の前の景色が違って見えたりするかもしれません。さぁ、のびをして、あくびをして、頭の中をひっくり返そう!

翻訳/村井章子 ブックデザイン/佐藤亜沙美 イラスト/平山昌尚

優柔不断

 害悪にもいろいろあるが、最悪なのは決断できないこと、つまり優柔不断だとデカルトは言っている。なぜなのか説明はしていないが、繰り返しそう言っているのである。人間の本性をこれ以上的確に指摘した言葉があるだろうか。あらゆる情念がもたらす不毛な衝動は、この優柔不断ということで説明がつく。

 運まかせの賭け事が人々に好まれるのは、決断力を鍛えてくれるからだろう。あまり理解されていないことだが、賭け事には人間の精神にとって重要な力が秘められている。ものごとのありようは完全には同等ではないので、あれかこれかと際限なく考えさせられる。が、賭け事はそれに挑戦状を突きつける。賭けでは、どれも厳密に平等な選択肢の中から一つを選ばなければならない。このような抽象的なリスクは、言ってみれば熟考に対する侮辱である。とにかく意を決しなければならない、するとすぐに答が出る。私たちの思考を蝕むあのいやな後悔は、けっして湧いてこない。なぜなら、後悔する理由がないからだ。「もし知っていたら」ということはできない、事前に知ることはできないのが賭け事の決まりである。だから賭け事が倦怠の唯一の治療法だとしても、私は驚かない。倦怠とは大方の場合、考えても無駄だと知りつつあれこれ考えることなのだから。

 恋に落ちて夜眠れない男や、失意の野心家は、いったい何に苦しんでいるのだろうか。この種の苦しみは、すべて思考の中にあるのだが、しかしまた、すべて身体の中にあると言うこともできる。眠りを追い払ってしまう心のざわめきを生むのは、何も決められないというあのむなしい決定、つまり優柔不断にほかならない。優柔不断に陥るたびに、それは身体に作用し、草の上の魚よろしく、まんじりともせず夜を明かすことになる。じつは優柔不断の中にはある種の暴力が潜んでおり、「もういい、すべてやめにしよう」と言い出すことがある。だが思考はすぐに妥協案を持ち出す。すると、ああすればこうなる、こうすればああなる、といつまでも思い悩んでいっこうに前に進めない。

 実際に行動に移すことの利点は、選ばなかった選択肢は忘れられることである。正確に言えば、もはや存在しなくなる。行動を始めることで、ものごとのつながりがすっかり変わるからだ。だが頭の中で行動するだけでは、何も変わらない。すべてが元のままである。どんな行動にも、賭けの要素がある。すっかり考え尽くす前に、考えを打ち切って決めなければならない。

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