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幸福論 by アラン

新訳で読むアラン『幸福論』―喜びの本質

2014年10月16日

「楽しめることが能力の証である」

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 「もう深刻ぶるのはやめてのんきにやろう」と語るフランスの哲学者・アラン。『幸福論』とは、アランが書いた短いエッセーの中から、幸福に関するものを選んでまとめた哲学書です。本連載では、約90年も前に書かれた名著『幸福論』の中から10本を厳選し、新訳でお届けしていきます。アランの考えに触れることで、複雑に見えた困難や悩みが形をかえたり、目の前の景色が違って見えたりするかもしれません。さぁ、のびをして、あくびをして、頭の中をひっくり返そう!

翻訳/村井章子 ブックデザイン/佐藤亜沙美 イラスト/平山昌尚

アリストテレス

 やってもらうのではなく自分でやることが、喜びの本質である。ところがアメはしゃぶってさえいればそこそこおいしいものだから、多くの人が幸福も同じように味わえると期待し、まんまと裏切られる。聴いているだけで自分では歌わないなら、音楽の楽しみはほとんど味わえない。だから機知に富む人は、音楽は耳で楽しむものではなく喉で味わうものだと言っている。美しい絵を見る楽しみは所詮ひとときの楽しみであって、それほど長続きはしない。自分で絵筆を振るったり、苦労して蒐集したりするから楽しいのである。判断するだけでなく、探求し征服することを私たちは楽しむ。

 芝居を見に行って、人にこぼす以上に心底退屈してしまうことはめずらしくない。必要なのは自分で芝居を書くこと、すくなくとも演じることだ。演技もまた創造である。実際、誰しも余興で寸劇などを演じた思い出があるだろう。演技をするときにはみんな大いに楽しんでいたはずだ。私にも、人形劇のことばかり考えていた幸福な一時期の思い出がある。木の根っこを拾ってきて、自分のナイフで高利貸しや軍人や若い娘や老婆などを彫った。ほかの子たちが衣装を着せてくれた。見物人のことは気にしていなかったと思う。見物人にできるのは批評ぐらいのもので、そんなものはとるに足らない楽しみに過ぎない。それも、彼らが作り出した喜びではあるのだろうけれども。

 トランプ遊びをする連中も、絶えず新しい局面を作り出し、機械的に進む勝負の流れを操り、微調整している。勝負の仕方を知らない人に、好きかどうかを訊ねても意味がない。やり方がわかってしまえば駆け引きもおもしろくなるが、そのためにはやり方を知らなければならない。万事が同じで、幸福にしても、なるための方法を知る必要がある。

 幸福はいつも逃げて行くと言われる。与えられた幸福なら、たしかにそうにちがいない。そもそも人から与えられる幸福など存在しない。だが、自分から作り出した幸福はけっして裏切らない。それは学ぶことである。そして人はいつも学んでいるし、知れば知るほど多くを学べるようになる。だからラテン語を学ぶのは楽しい。この楽しみに終わりはなく、むしろ進歩するほどに楽しみは深まる。音楽の楽しみも同じである。

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