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幸福論 by アラン

新連載! 新訳で読むアランの『幸福論』

2014年9月4日

「幸福でいることには意思の力が働いている」

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 「もう深刻ぶるのはやめてのんきにやろう」と語るフランスの哲学者・アラン。『幸福論』とは、アランが書いた短いエッセーの中から、幸福に関するものを選んでまとめた哲学書です。本連載では、約90年も前に書かれた名著『幸福論』の中から10本を厳選し、新訳でお届けしていきます。アランの考えに触れることで、複雑に見えた困難や悩みが形をかえたり、目の前の景色が違って見えたりするかもしれません。さぁ、のびをして、あくびをして、頭の中をひっくり返そう!

翻訳/村井章子 ブックデザイン/佐藤亜沙美 イラスト/平山昌尚

悲しいマリー

 ときには周期的な躁鬱病について考えてみるのも、悪くはあるまい。ある心理学の先生がたまたま病院で見つけたこの「悲しみのマリーと喜びのマリー」という症例は、とりわけ考えるべき点が多い。もうすっかり忘れられてしまった話だが、覚えておく価値はありそうだ。

 マリーという娘は時計のような正確さで、一週間は陽気になり次の週には悲しくなった。陽気なときは、万事がうまくいった。雨が降っても晴れても楽しく、ほんのちょっと親切にしてもらっても有頂天になり、好きな人のことを思い浮かべただけで「あたしってほんとにしあわせだわ」と考えた。退屈なんて、もちろんしない。どんなささやかな思いつきも喜びに彩られていた。ちょうど、誰からも愛される生き生きした花のように。まさに理想の状態である。読者のみなさんもどうかこのときのマリーのようでいられますように、と祈らずにいられない。

 どんな水瓶にも把手が二つあるようにものごとには二つの面がある、と賢者が語ったとおり、同じことでももうだめだと思えばだめになるし、大丈夫、元気を出そうと思えば大丈夫なものだ。しあわせになろうとする努力はけっして無駄にはならない。

 だが、一週間後にはすっかり調子が変わってしまう。マリーはどうしようもない無気力に陥り、何事にも興味をもてなくなる。何もかもつまらなく見え、幸福も愛情も信じられなくなる。あたしを愛してくれた人なんて、一人もいなかった。それも当然だわ。だってこんなに馬鹿でいやな女なんだもの。マリーは病気のことを考えては病気を悪化させ、しかもそのことを承知していた。ある種おそろしい方法で、彼女は小刻みに自殺していたのである。そして「あたしに気があるって信じさせたいんでしょうけど、おあいにくさま、そんな芝居にはだまされませんよ」などと言うのだった。誉められれば馬鹿にされたと思い、親切にされれば侮辱されたと感じ、内緒話をされれば腹黒い陰謀だと疑った。

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