働く女性のための学びと出会いの場「日経WOMAN Networking フォーラム 2014」が5月24日、東京ミッドタウンで開催された。各界の第一線で活躍する4名の講師による講演に、集まった244人の女性たちはメモをとりながら真剣に聞き入った。
第三講演では、第一生命経済研究所、主席エコノミストの永濱利廣氏が登壇。『日本経済の行方とマネーの新常識~増税時代を乗り切るための経済リテラシー~』と題し、日本経済の現状や、働く女性が知っておくべきマネーの常識をわかりやすく解説した。
【アベノミクスとは何か】
「今後の経済を理解する上で、アベノミクスという言葉はぜひ知っておいていただきたいと思います。アベノミクスによって、日本経済を取り巻く状況は大きく変わりました。では、アベノミクスとは何か。その最終目標は、15年以上続いてきたデフレからの脱却です」。

デフレが続くと、物の値段が下がり、お金の価値が上がる。消費者は、できるだけお金を使わずじっとしているようになり、お金が流れにくくなる。そのままでは、経済が一向によくならない。「デフレを克服するために、お金の価値を下げ、物の値段を上げる必要がある。そのために、世の中に流通するお札の量を増やしたのがアベノミクスの第一の矢です」。
ここで永濱さんは、日本のマネタリーベース(中央銀行が供給するお札の量)の推移を表すグラフを提示。「実際にデータを見てもらうと、アベノミクスによって、2013年からお札の量が急に増えていることがわかります。近年の欧米諸国では、景気が悪くなるとお札の量を増やし、景気がよくなるとお札の量を減らすことで、景気をコントロールしています」。
日本は、1990年のバブル崩壊後に金融緩和が不十分だったため、デフレが加速したとみられている。アメリカはこれを教訓に、2008年秋、リーマンショックによって世界的金融バブルが崩壊した際、お札の量を急激に増やしている。アベノミクスも、アメリカの例にならったというわけだ。
お金の価値が下がると、何が起こるか。「円安が進み、株価が上がります。経済がグローバル化する現代、企業にとっても、国際市場で国内の物やサービスをいかに売るかが重要です。円安の時には日本の物やサービスが売れるようになり、日本企業の株価が上がります」。
上がるのは株価だけではない。さまざまな物価や、土地の値段も上がる。つまり、「現金でお金を持っていても価値が下がっていくだけ。結論から言えば、今後は、貯蓄から投資へという流れになると考えられます。物価や地価に連動して価値が上がる金融商品など、資産にお金を動かすことが重要な世の中になるのです」。