陸上自衛隊初の心理幹部として、衛生科隊員たちへのメンタルヘルス教育や、自殺防止、カウンセリングなどを行う下園壮太さん。自衛隊員はときに過酷な任務で極限の心理状態に置かれることがありますが、それをコントロールしたり、メンテナンスする方法を教えたりするのが心理幹部の役割です。こうした自衛隊でのノウハウは、普通の生活をしている人のメンタルマネジメントにも役立つヒントがいっぱい。下園さんの著書「自分のこころのトリセツ」の中から、働く女性が抱えるリアルな悩みに寄り添う解決のポイントをテーマにわけて紹介します。

 お酒、衝動買い、ストレス食い。やってはいけないと思っていても、つらくなったときにどうしてもやってしまうことはありませんか?

 人の気持ちを苦しい状態にするストレスについて、私は二つに分けて考えることにしています。一つは、睡眠不足や疲労などで物理的なエネルギーが低下することによる「エネルギー苦」。もう一つは、不安や恐怖といった感情にさらされることによる「不快感情の苦」です。

 たとえば、あなたを今苦しめているのがエネルギー苦だけであれば、眠ったりおいしいものを食べたりすることで、わりと簡単に復活することができるはずです。

 しかし、ストレスは一筋縄ではいきません。いくらエネルギー苦を解消しても、不快感情の苦が減らなければ、トータルのストレスは減らないのです。

 不快感情の苦を止めたいときは、その不快な感情自体を止めればいいのですが、不快を引き起こしている環境が変わらないことには、不快感情を抑えるのはとても難しいですね。そこで人がよく行うのが「快感をかぶせる」という対処法です。手段はなんでもよくて、とにかく快感をかぶせると、不快感情は一瞬でシュッと消えてしまうのです。

 たとえば、お酒。酔っ払うと、一時的にですが不快感情が止まります。お酒を飲んだ後は眠くなるから、一見、エネルギー苦も減るように思えます。しかし、お酒を飲んで眠ると睡眠の質は下がり、エネルギー苦はむしろ増えてしまいます。もっと苦しくなる、苦しいときにはお酒を飲むと楽になるということを学習している、だから飲酒を続けてしまう。このように、「結果的に自分を苦しめるのにもかかわらず、その行為を続けてしまう」ことを私は「しがみつき」と呼んでいます。

 自分で自分の首を絞める、しがみつき行為。どんなことにしがみつくかは、人それぞれにクセがあります。仕事、恋愛、過食、買い物、ギャンブル。そうやってしがみついている人に「やめたほうがいいよ」と言っても、絶対に耳を貸しません。なぜなら、しがみつき行為をやめると、もっとつらくなることを本人が知っているからです。