運命の相手はいると思いますか? 私は、いると思います。と言うか、そう信じたいです。みなさんも同じではないでしょうか。ラブストーリー作品では、「運命の相手とは赤い糸で結ばれているから、出会ってすぐにそうだと分かる」と描かれつつも、「その人と結ばれるとは限らない」という展開が結構あり、見る者をやきもきさせたりします。そして、その相手が意外な人物だったりすることも。
今回、紹介する作品は、運命の出会いだと直感した相手が女性で、お互いに引かれ合い、激しく求め合いながらも、2人の間に立ちはだかる格差や価値観の違いに悩む、女性同士のラブストーリーです。

(C) 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES - RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS
監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
原作:ジュリー・マロ『ブルーは熱い色』
出演:レア・セドゥ、アデル・エグザルコプロス、サリム・ケシゥシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラユルトほか
配給:コムストック・グループ/配給協力:キノフィルムズ
公式サイト:http://adele-blue.com/
道ですれ違ったブルーの髪の女に、一瞬で心を奪われたアデル(アデル・エグザルコプロス)。男とデートしてセックスしても、自分に嘘をついているようで、悲しい気持ちになってしまうアデルは、ブルーの髪の女、エマ(レア・セドゥ)と偶然再会します。


画家を目指しているエマの、知的な会話とクールなまなざしにどんどん引かれていくアデル。2人は恋に落ち、肉体的にも激しく求め合うようになります。アデルは生きる喜びを心から感じ、エマも美しいアデルに夢中になります。

お互いの両親と会うことにしたエマとアデル。エマの家族が裕福なエリート階級に属する一方、労働者階級のアデルの両親は芸術をそれほど理解せず、堅実に働くことが最も大切なことだと考えています。
教師を目指しているアデルは、自分の目標に揺るぎない信念を持っていますが、エマは文才を生かそうとしないアデルに不満を覚えます。一方でアデルは、エマが仲間たちと交わす芸術論に入っていけず、さみしい思いをします。愛し合っているはずなのに、少しずつ2人の間にわだかまりが芽生え始めていきます……。
本作は、運命の出会いによって結ばれた、ある1つのカップルの激しい愛の物語です。恋愛においては、気持ちが通じなくて悩んだり、自分が思うほどに相手に思ってもらえていない気がして、つらくなったりなど、それは異性同士でも女性同士でも同じだということが本作から伝わってきます。
2013年のカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した本作は、第66回審査委員長のスティーヴン・スピルバーグから絶賛されました。本来、パルムドールは監督1人に授与されるのですが、主演のアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥにも同時に贈られるという、カンヌ史上初の“革命”が起こされたことで話題を呼びました。
2人の迫真の演技には、完全に引き込まれます! レアは、これまでは「マリー・アントワネットに別れをつげて」などで、女性らしい魅力にあふれた女優だと思っていましたが、本作ではとてもクールで、女子が惚れる女子を熱演。大注目の新進女優であるアデルは、ドキュメンタリー作品に出演しているかのようなナチュラルな演技で、観客を魅了します。

本作は、フランスのジュリー・マロによるコミック『ブルーは熱い色』(DU BOOKSより発売中)を原作にしていますが、懸命に今を生きる全ての世代の女性に向けて描かれており、11カ国で大ヒットしています。
映画「アデル、ブルーは熱い色」が女性同士のラブストーリーである最大の魅力の1つは、映画史上最高に美しいと絶賛されている、アデルとエマの激しい愛を表現する官能的なラブシーンです。これを避けては、この映画を語れません。アブデラティフ・ケシシュ監督は、「絵画のように、彫刻のように撮影しました。多くの時間をかけて照明を当て、確実に美しく見えるようにしました」と語っています。私の率直な感想は、美しいのはもちろんですが、2人のセックスにとても興奮しましたし、女性同士の愛し合い方をストレートに見せていて、レアとアデルが本当のカップルのようだと思いました。すごい監督、そしてすごい女優たちです!
天職を見つけ、その仕事に熱心に取り組む女性が、恋愛における情熱や悩みが仕事に影響することにも対処する姿をリアルに描いた「アデル、ブルーは熱い色」。この春一番の、働き女子必見ムービーだと思います。