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辛い過去の記憶に触れるそのときに

2014年3月1日

ケイト・モートン著『秘密』/瀬尾まいこ著『春、戻る』

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「本は好きですか?」と聞かれたら「はい」と答えます。

「では、どんな本が好きですか?」と聞かれると困ります……。

「もともとは小説が好きで、でもノンフィクションも読みますし、新書もよく読みますがどんな本も好きで……」とゴニョゴニョと言葉を探しているうちに、再び質問が。

「……どんなジャンルの小説が好きですか」

 小説と一口にいっても、ミステリー、警察、恋愛、ハードボイルド、ユーモアなど「OO小説」の「OO」に入る言葉の数だけ、いわゆるジャンル分けがなされています。ジャンルにかかわらず、わたしが好んで読むのは、謎に満ちた作品。一旦物語に迷い込むと、現実が遠い世界のように感じる小説。映像ではあらわせない、小説ならではの面白さたっぷりの作品を紹介します。

ケイト・モートン著 青木純子訳

『秘密』上下巻(東京創元社)

 主人公のローレルは少女だったころ、突然見知らぬ男が家の庭にあらわれました。そして母が男をナイフで刺し殺すという事件が起こります。ローレルの証言もあって母の正当防衛は成立したのですが、実はローレルは聞いてしまっていたのです。男が「やあ、ドロシー」「久しぶりだね」と母を呼びかけたのを。

「母と男は知り合い?どうして殺したの?」ローレルが疑問を抱き続けて数十年。母はまもなく死を迎えようとしています。

 物語は、成人したローレルが過去の事件の真相を追うのと並行して、ドロシーの人生が語られます。

 家族、特に親の人生について、子どもはそれほど詳しくないのが普通ではないでしょうか。本作は、母がまだ母でなかったころ、ローレルが生まれる前の恋、夢、仕事、友人関係、両親への反発、憧れと嫉妬…手に届きそうな平凡な幸せと、思いがけない幸運を天秤にかけてしまうドロシーの心。渦巻く感情に美しいものもあれば、打算めいたものもあります。この無自覚な残酷さには覚えがあります……。

 登場人物の過去に入りこんでいくと、ふいに自分の心が照らし出される瞬間があります。たとえるなら過去の自分に対面する感じ。気恥ずかしく、懐かしく、過去の自分を見つめます。不思議な感情に浸っているうちに、物語は思いがけない展開を見せます。「あぁ、そういうことだったのか!」 いつからか止めていた息が一気に漏れたかのように「秘密」が明かされます。

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Profile
中江 有里
中江 有里
1973年大阪生まれ。89年芸能界デビュー。 2002年「納豆ウドン」で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。 NHK-BS「週刊ブックレビュー」で長年、司会を務めた。 近著に「ホンのひととき 終わらない読書」(毎日新聞社)。 現在、NHK「ひるまえほっと」‘中江有里のブックレビュー’に出演、 関西テレビ「スーパーニュースアンカー」、フジテレビ系「とくダネ!」にコメンテーターとして出演中。新聞や雑誌に読書エッセイを連載中。書評も多く手がける
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