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娘を愛せない母―姫野カオルコさん

2014年2月12日

でも母も一人の女性、好き嫌いはある

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母娘関係トークの第二弾は、『昭和の犬』で見事、第150回直木賞に輝かれた姫野カオルコさんと、

この連載の筆者である大川内麻里とのお話です。2回に渡り、母娘関係について存分に語り合います。

ほくほく、ほくほく……と聞こえてきそうな、とてもあたたかくチャーミングな笑顔で語ってくださいました。

 姫野カオルコさんの『昭和の犬』は、奇異な両親のもとに育ったひとりの女性の人生をたどった作品。悲喜こもごもの昭和を生きた女性の45年あまりが、彼女のそばにいる犬、猫の姿を通して描かれてゆきます。

 また過去の作品『ドールハウス』では、重苦しい「家」に縛られる女性が描かれています。

 これらは、どこか姫野さんご自身をも彷彿とさせはしないでしょうか。

 そして通いでご両親の介護にもあたられた経験のある姫野さん。『風のささやき~介護する人への13の話』という掌編小説集もお書きになられています。

●姫野カオルコ・姫野嘉兵衛(ひめの・かおるこ)
小説家。
1958年、滋賀県出身。独特の筆致と幅広い作風で、特異な位置に立つ。読者層は男女同数。
1997年『受難』が第117回直木賞候補、2002年『よるねこ』収録の「探偵物語」が推理作家協会の『ザ.ベストミステリーズ』、2004年『ツ,イ,ラ,ク』が 第130回直木賞候補、2006年『ハルカ・エイティ』が第134回直木賞候補、2010年『リアル・シンデレラ』が第143回直木賞候補となったのち、2014年『昭和の犬』で第150回直木賞受賞。5回目のノミネートにして受賞となった。受賞会見には愛用のジャージ姿で登場し、世間の話題をさらった。
公式WEBサイト:http://himenoshiki.com/

■「わが子なのにかわいいと思えない」――母の日記を見てしまって

大川内:『昭和の犬』をはじめ『ドールハウス』『喪失記』など、姫野さんの作品の多くに、幼いころを宣教師宅で過ごし、ある程度の年齢になってから両親と暮らしはじめる、という女性が主人公として描かれています。

 宣教師というのは、いわば絶対神との契約で成り立っている西洋社会の伝道師。そこから絶対神不在の日本の家庭に移動するんですよね。神との契約による罪の文化から、神が不在の日本的な恥の文化へ。非常に興味深いです。

姫 野:私自身がそうでした。だから自伝的要素が強いものは、そうなっちゃうんですよね。

 私が小さいころにお許しくださいと一生懸命お祈りしていたら、母が「私は、なにも悪いことしてへん。謝る必要ないわ」って母が言ったの(笑)。

大川内:え~! それは! 姫野さんとお母さんとでは、まったく文化が違ったということですね。

姫 野:でも私は、母といさかいをするようなことはありませんでした。

大川内:いさかいをするほど会話がなかった?

姫 野:母からも父からも暴力をふるわれたわけではないし、両親にも機嫌がよさそうなときはありました。彼らなりにかわいがってくれました。

 両親とももう亡くなりましたが、決して非道な両親だったなどとは思いません。

 ただし、両親の亡きあと、実家を整理していたら、母の日記がたくさん出てきて。故人とはいえ、人の日記を見ることには抵抗があって触れずにおいたのですけれど、整理の最中にちらっと見えてしまった。

 そしたらね、「自分の子なのに、どうしてかわいいと思えないんだろう」って、母が述懐していました。

大川内:……それを見たときのご心境は?

姫 野:ほっとしました。

大川内:ほっとした?

姫 野:たとえばこれが、「どうしてこんなにかわいいと思っているのに、この子はわかってくれないんだろう」だったら、なにか私に誤解があったのかとつらい気持ちになったと思うんです。

 でも「かわいいと思えない」と母が書き残していたことで、私が子どものころから胸の奥に募らせてきた「なにかこの家は居心地が悪いぞ、おかしいな」という思いが、あぁ決して私の思いすごしによるものではなかったんだと思えたから。なにか私の疑念だとか悪い性格によるものではなかったんだと安心したんです。

大川内:なるほど。

姫 野:そういうことってあると思うんです。産んだからって、母親みんながみんな、わが子をかわいいと思えるわけではない。

 4歳以下は別だけれど、人格が出てきたら、動物じゃないんだから相性ってあると思うんですよ、親子にも。

 だって子どもは両親とは別の学校へ行き、別の先生に習い、違う世間で育っていくわけじゃない? そしたらできてくるものって、親子とはいえ違うわけだから。親子の相性が合わないという悩みはあって当然だと思います。

 ましてや私の母は、父のことを大嫌いだったみたいですからね。もうね、「この縁談が破談にならないものか」とか「死ねー!」とか書いてあるの(笑)。

 それくらい嫌いな人の子だもの、私の顔は父そっくりですから、なにかもっと生理的なものだったんだろうから、しょうがないよね。単純なこと、相性なんかも。

大川内:そもそもお母さまは、どんなかたでした?

姫 野:穏やかな人でしたよ。キーキーきついかんじでは、まったくなく。だから、私、つらかったのは、家のことを他人に相談できなかったことですね。そんな母だから、私にきついことを言うなんて、誰も思いもよらない。

大川内:私の母も、一見すれば、きっと「いいお母さん」でもあったので、お察しします。

姫 野:私もね、第三者だったら、母に「しょうがないよね、だって嫌いな人の子だもんね」って言葉をかけたでしょう。

……ううん、娘であっても、もっと私が母が若いころの子どもだったら、相談に乗ってあげられたのに。

 私は両親が年を取ってからの遅い子どもだったので、母の話を聞いてあげられるくらいの年齢になったときには、母はもう老いてしまって、それどころじゃなかった。それは残念なことでした。

大川内:でも『昭和の犬』にも『ドールハウス』にも出てきますが、「あんたはお父さんそっくり」と攻撃を受けるのは……私もありましたけれど、しんどいですよね。

■ひとりっ子で心細かった私。もしきょうだいがいたら

姫 野:大川内さんはごきょうだいは?

大川内:5歳下の弟がいます。

姫 野:私、ひとりっこで心細かったから、きょうだい幻想がものすごくあるんです。弟がいたら、心強かったんじゃありませんか?

大川内:それが、母が私には弟の困ったことを吹き込んで、弟へ悪い感情を抱かせ「あなただけが頼りよ」、弟には私の困ったことを吹き込んで、私へ悪い感情を抱かせ「あなただけが頼りよ」と、きょうだい間を分断させるような、巧妙なコントロールを働いていて。母から離れてみて、はじめて気付いたんですが。

姫 野:きょうだいが結束しないように?

大川内:そうですね。

姫 野:私、きょうだいがいる人が、本当にうらやましくて。一番仲のよかった友だちに弟がいて、彼女の家がすごくいい家だったからかもしれない。いいお父さんがいて、いいお母さんがいて、家族みんながいい人だったの。

大川内:きょうだいへの憧憬は、姫野さんの作品にはよく出てきますよね。『ドールハウス』などにも見受けられましたね。

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Profile
大川内 麻里
大川内 麻里(おおかわうち・まり)
1977年、福岡県生まれ。著述家・編集者。自身の被虐待や母娘関係の問題、不登校や高校中退(大検を取得し進学。心理学専攻)、離婚、うつ病などの実体験をもとに活動。
執筆、講演や心理相談のほか、出版やイベントのプロデュースも手掛ける。
naked heart代表。親友である元アイドルのチバレイこと千葉麗子さんとともに、自身のうつ病体験を赤裸々に綴った『チバレイ&マリの壮絶うつトーク~うつ女子ほど、仕事も恋もうまくいく!~』も話題を呼び、多くの女性たちから共感の声が寄せられた。著書に『這い上がるヒント~諦めなかったお笑い芸人30組の生き様』(東邦出版)、『うまくいかない自分から抜け出す方法』(かんき出版)ほか。『相方~ビートたけしとの幸福/ビートきよし 著』(東邦出版)の構成も手掛けた。
*公式サイト:http://naked-heart.jp/ *Twitter&Facebook:OkawauchiMari
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