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夜WOL小説・すあしの恋―第32話

2014年2月18日

橘女史の過去

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、いよいよ終盤! 毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 「このお酒、ほんとうに、あなたとよく似てるわ」

 橘は、早紀のぐい飲みに、2合徳利の酒をつぎたしながら続けた。

 「当然よね。だって、このお酒、あなたのお父様が造ってるんだから」

 「ご存知だったんですか?」

 驚いてみつめる早紀に、橘はしれっと答えた。

 「わたしはあなたを引き抜いた上司よ。それに、知らなかったら、こんなにたくさんある日本酒のなかから、わざわざ、これを頼んだりしないわ」

 マスターが口をはさんだ。

 「そんなこと言って、サユリちゃん、これしか飲まなかったじゃないか」

 「ずいぶん前の話でしょ? いまはもっと、いろんな美味しいお酒、知ってます。マスター、昔は、そんな意地悪な言い方しなかったわよ」

 橘が文句を言うと、マスターはやわらかな口調で言い返した。

 「サユリちゃん、10年も来なかったんだから、意地悪したくもなるだろ?」

 「そっか。もう、そんなに経つのね」

 橘は、ぐい飲みのなかの酒をみつめながら尋ねた。

 「あの人は……村沢は、来てる?」

 「ああ、去年の終わりごろから、たまに……」

 そこまで言って、マスターはちらっと早紀をみてから、

 「……いつも、一人で来て、その酒を飲んでるよ」

 「そっか」とつぶやくと、橘は、ぐい飲みを置き、早紀に顔を向けた。

 「実はね、この店も、このお酒も、村沢に教えてもらったの。もう20年近く前の話よ」

 早紀は、思わず目を伏せた。

 村沢にここに連れて来てもらったことを打ち明けるかどうか、迷った。

 橘にはうそをつきたくなかった。

 言わないでいるのは、うそをついているのと同じだと思った。

 早紀は心を決め、村沢とのことを橘に話そうと、視線を上げた。

 カウンターのなかのマスターと目が合った。

 マスターは真剣な表情で小さく首をふってから、空になった2合徳利を取り上げながら言った。

 「あの頃のサユリちゃん、とんがってたな。いくら正直だからって、なんでもかんでも、言わなくていいことまで口にするから、よく、ここで喧嘩してたよな」

 「あれは村沢が悪いのよ。僕はウソが嫌いだとかなんとか言って、こっちが傷つくに決まってるようなことでも、素直に言葉にするから」

 「サユリちゃんが繊細すぎるんだよ」

 「村沢ほどじゃないわ」

 早紀は、思い切って尋ねた。

 「交際してらしたんですか?」

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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