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夜WOL小説・すあしの恋―第26話

2014年2月10日

大切なことを忘れている気がする…

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来したかも!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 まぶたが上がった。

 すぐ近くに、穏やかな寝息をたてる村沢の横顔があった。

 早紀は、村沢の胸に置いていた手をそっと引いた。

 ぴったりと寄り添わせていた体を、あお向けになりながら離し、フロアに足を下ろした。

 それから、ベッドに両手をつき、長いまつ毛を伏せたまま眠りこむ村沢の顔をのぞきこんだ。

 薄く開かれた村沢のくちびるに吸い寄せられるように、早紀は顔を近づけた。

 互いの鼻先が触れそうになったとき、動きを止めた。

 しばらく迷ったあと、早紀はわずかに上体を伸ばし、村沢の額にキスした。

 村沢は、小さくうなると、寝返りを打った。

 早紀は立ち上がり、身支度を始めた。

 シャワーは自宅に戻って浴びることにした。

 洗面所で顔を洗い、メイクして髪を整えると、もう一度、村沢の寝姿に目をやった。

 玄関に出て、靴をはこうとしたとき、下駄箱の上に置かれた写真立てに気づいた。

 村沢が、幼い少女に頬ずりしていた。

 あの無邪気な少年の微笑みではなく、優しくて頼もしい父親の笑顔だった。

 照れくさそうに抱かれる少女の瞳は、父への愛情と幸福感とで輝いていた。

 〈どうしよう……これから、どうすればいいんだろう?〉

 早紀は写真立てから目をそらすと、靴をはき、音がしないようにドアを開け、外に出た。

*    *    *    *    *    *

 自宅に戻り、シャワーを浴びて出て来ると、ケータイが震えていた。

 村沢からだった。

 出る勇気がなかった。

 ケータイは、ずいぶん長いあいだ震えてから、止まった。

 しばらくすると、また震えたが、今度はすぐに止まった。

 村沢からのメールだった。

 「今日、それがだめなら、明日、会えないか?」

 早紀は、しばらく迷ってから、

 「今日も明日も用事があります。ごめんなさい」

 そう返信した。

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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