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夜WOL小説・すあしの恋―第18話

2014年1月29日

「恋愛より、仕事の方がずっとカンタン…?」

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来したかも!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 「サキ。あんたがどうして泣けなかったのか、教えてあげる。いちばんの理由は……」

 「頭で考えちまったからだろ?」

 早紀と奈津は、驚いてカウンターの隅を見た。

 ナベさんは、本に目を落としたまま、ひとり言のように続けた。

 「よく言うだろ? 男は頭で考えて、女は子宮で考えるって。泣くはずのところで泣けなかったっていうんなら、きっと、そんとき、お嬢さんは頭で考えちまってたんだよ。だから……」

 早紀は、かたわらの奈津が叱責しようとしているのを感じた。

 それより一瞬はやく、悦子が一喝した。

 「ナベさん!」

 大きな声ではなかったが、きつい口調だった。

 「盗み聞きも失礼だけど、そんな割りこみ方は完全にルール違反よ!」

 ナベさんはゆっくりと視線を上げた。

 悦子の険しい表情を目にすると、あわててうつむいてしまった。

 「いや、悪気はなかったんだ。ただ……」

 「飲み過ぎよ。これ以上、おとなげないふるまいを続けるなら、今夜はもう……」

 「申し訳ない。もう二度と、おふたりの邪魔はしないよ」

  そう言うと、店の奥にある洗面所へと立ち去った。

 「ごめんなさいね。悪い人じゃないんだけど、酔うとつい他人の話に入りたがるくせがあって」

 「だいじょうぶですよ」と奈津が言った。

 「この前、ここでお会いしたとき、酔っぱらった勢いでしちゃったあたしのぐだぐだ話も、真剣に聞いてくれたから。いい人だってことはわかってます」

 奈津は、チェイサーの水をひと口、飲んだ。

 「男って、女がなにを考えてるのか、まったく理解できないもんだから、『子宮で考える』なんてバカみたいな話、本気にしちゃうんだよね。女だって頭でしか考えられないっつうの……」

 奈津は、ワイングラスを引き寄せながら続けた。

 「……でも、話に割りこんでもらえたのは、よかったかもしれないな」

 どういう意味か尋ねようとしたとき、奈津が先に口を開いた。

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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