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夜WOL小説・すあしの恋―第17話

2014年1月28日

忘日庵で恋愛トーク

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来したかも!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 「なんだか、ほっとした!」

 早紀はグラスのなかの白ワインを見つめた。

 かすかなゴールドの光が揺れている。

 かたわらの奈津が、呆れたように言った。

 「それが感想? 香りがすてきとか、せめて美味しいとか、もっとまともなほめ方があるでしょ」

 「すごく美味しいよ。でも、ほんとにそう思ったんだもん」

 「このワインを飲まれた方は、よく、そう言われますよ」

 道成寺悦子は、ふたりの前に、いまついだばかりのワインボトルを置きながら言った。

 もうひと口、強めの甘さと酸味の絶妙なバランスを楽しんでから、早紀は店内を見渡した。

 奈津が言っていた「大人の隠れ家」という表現がぴったりだった。

 壁の一角にはさまざまなかたちのグラスが並び、どれもみな美しく磨きこまれている。

 カウンター席が七つあるだけの店内には、80年代の洋楽が、会話のじゃまにならない音量で流れている。

 初めて訪れたのに、どこか懐かしさを感じさせた。

 奈津から「美味しい洋酒がそろってて、とくにワインをグラス単位で飲ませてくれるのが人気なの」と聞いて、早紀は「行きたくない」と拒んだ。

 「そんなこと言わないで、だまされたと思って付き合ってよ。オーナーの悦子さんが、毎日ちがった種類の白をすすめてくれるんだけど、それが、すっごく美味しいの!」

 奈津があまりに熱心に誘うので、とりあえず試してみることにした。

 来てよかった、と早紀は思った。

 「悦子さんが1杯めに、アルザスじゃなくてドイツのリースリングを出したってことは、そちらのお嬢さん、なにか辛いことがあったんだね」

 早紀と奈津は、カウンターの隅に座る五十ぐらいの男を見た。

 どういう意味か、尋ねようとしたとき、悦子が言った。

 「ナベさん、おふたりのじゃましちゃだめよ」

 「ナベさん」と呼ばれた男は、不服そうに悦子をちらりと見てから、カウンターの上に並べられた本の物色を始めた。

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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