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夜WOL小説・すあしの恋―第15話

2014年1月24日

〈バカみたい……バカみたい……バカみたい……〉

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来したかも!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 高橋は、立ち尽くす早紀のかたわらを過ぎ、シャワールームから洩れる石坂の鼻歌も無視して、廊下の先のリビングに消えた。

 早紀がリビングに戻ると、高橋は感情のない目でテーブルをみつめていた。

 「このメニューつくったんだ……」

 そうつぶやくと、高橋はふりかえり、早紀の目をまっすぐみつめた。

 「秘書課の高橋麗子です」

 グレーのスウェットトップに淡いブルーのステンコートをはおり、ボトムは紺のチェック柄のペンシルスカートだった。

 会社にいるときとはちがい、カジュアルでモノトーンな装いだった。

 それでも地味にはならず、清楚な可愛らしさを演出できるのは「まだ20代」という無意識な自信のなせる業(わざ)だった。

 「あっ、どうも」

 早紀は目を伏せた。

 レストランでもないのにめいっぱいドレスアップしている自分が、とても場ちがいに思えた。

 「初めまして。私は……」

 「営業部営業1課の佐藤早紀さん」

 「あ、はい」

 「ジンとは、どこまで?」

 「え……」

 高橋は、戸惑う早紀のようすを冷たい眼差しで観察していた。

 やがて、小さな吐息をもらすと、視線をシャンパンで濡れたテーブルクロスに落とした。

 「あなたは困るんです」

 「は?」

 「若い子はいいんです。しばらくすれば、すぐに飽きて、じょうずに別れてくれるから」

 高橋は視線を早紀に戻した。

 「でも、あなたみたいなおばさんに惹かれるのは、困るんです」

 あまりに失礼な物言いに、さすがの早紀もにらみつけようとした。

 が、思わず目をそらした。

 憎悪に満ちた彼女の形相は、美しいぶん、余計に恐ろしかった。

 「からだだけだと思うから、ずっと我慢してきた……」

 高橋の大きな目に、みるみる、涙があふれてきた。

 「……でも、心を持っていかれるのは、絶対に嫌なんです!」

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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