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夜WOL小説・すあしの恋―第12話

2014年1月21日

「走ること」と「毛」の不思議なカンケイ

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私は、東京に住むアラサーOLの佐藤早紀。恋はすっかりご無沙汰だった私にも、もしかしてモテ期が到来したかも!? 私の恋物語を描く『Web小説・すあしの恋』は、毎日18時に更新です!

(前話はこちら

 「あたしたちのお肌がツルツルなのは、走り続けるためなんだって」

 奈津は『BORN TO RUN』をパラパラとめくりながら言った。

 「走り続けるために、毛が薄くなったの?」

 「そう……ほら、ここ!」と奈津はページを開いたまま、早紀に手渡した。

 「ナツ、こんなにぶ厚い本、もう読み終わったの?」

 「流し読みだけどね。先週末、あんたがここに置き忘れてったから、預かっといた。デートする相手もいないし、この土日、部屋にこもって読んだんだ」

 早紀は相づちをうちながら、奈津が指し示した文章に目を通した。

*    *    *    *    *    *

 生き物が走るとき、最大の問題は「身体のなかにたまった熱をどうやって外に出すか」である。

 ランニングウエアの開発においても「走ることで体内に発生する熱をどう逃がすか」が最重要課題だと、早紀は涼介から教わった。

 実際、首筋から腰へと空気の流れをつくったり、ポケットに小銭を入れて脇腹をパタパタさせるなど、スポーツアパレル各社は独自の放熱技術を開発し、競い合っている。

 一方、全身を毛皮で覆われた動物は、体内の熱を口からしか排出できない。

 走って、どんどん熱くなってきて、身体のなかの熱を吐き出しきれなくなったら、止まるか、死ぬかしかない。

 毛のない人間の肌には、数百万の汗腺がある。

 走るとそこから汗が出る。汗は蒸発するとき、身体の表面から大量の熱を奪ってゆく。

 だから、毛のない肌に汗をかく人間だけが、身体を冷やし続け、走り続けられるとその本には書いてあった。

 早紀は、ほかにもおもしろそうな話はないか、ぱらぱらとページをめくりながらたずねた。

 「じゃあ、人類は走り続けるために毛が薄く進化したってこと?」

 奈津は、寄り添うベーコンたちをフォークの先でネチネチいじめながら答えた。

 「ま、そういうことね」

 「人類は、どうして走り続けなきゃいけなかったの?」

 「もちろん、生存競争に勝つためよ」

 「走り続けなければ、生き残れなかったの?」

 「オランウータンとかゴリラとかチンパンジーとかとちがって、二本の足で歩き始めた人類は、森を出て、草原で生きることを選んだの」

 「いつ?」

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Profile
佐宮圭(さみや・けい)
作家。1964年兵庫生まれ。早稲田大学第一文学部人文学科卒業。アパレルメーカーの営業、花屋の社員を経て、1993年3月、フリーランスの編集兼ライターとなる。子ども向けの科学雑誌や『文藝春秋』『週刊朝日』などで活躍。2010年、『さわり - 女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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