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働くワンコ大集合!

ゴミと捨てられた雑種犬が起こした奇跡

2013年9月25日

名犬チロリが切り開いた日本のセラピードッグの歴史

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 病気や障がいを持った人、介護が必要な高齢者などの治療を手助けするため、特別な教育を受けた「セラピードッグ」。前回ご紹介したように、日本では近年になってセラピードッグへの注目が高まっていますが、アメリカではセラピードッグが盲導犬と同様に普及しており、約65年もの長い歴史を持っています。

セラピードッグと触れ合うお年寄り(写真/工藤朋子)。

 日本でセラピードッグの育成や普及を行う国際セラピードッグ協会代表の大木トオルさんは、アメリカで成功を収めたブルースシンガーとして知られています。

セラピードッグの高齢者施設訪問で、司会を務める大木さん(写真/工藤朋子)。

 「今からおよそ35年前、私はアメリカでセラピードッグに出会い、ライフワークとしてセラピードッグの育成に関わるようになりました」(大木さん)。そして20年ほど前、セラピードッグを日本で普及させることを目指して帰国。大木さんは、アメリカでセラピードッグとして訓練されたシベリアンハスキーを日本に連れてきて、医療関係者にセラピードッグのパフォーマンスを見せたりトレーニングを行ったりと、地道な活動を重ねました。しかし当時は、病院や福祉施設に動物が入ることさえ拒絶されることが多かったといいます。

 そんな時、大木さんに運命の出会いが訪れます。

 それは、生まれたばかりの子犬5匹を連れた、メスの捨て犬でした。首輪をつけたまま団地のゴミ捨て場に捨てられていたその犬は、近所の子どもたちに拾われ、子犬たちと一緒に廃屋に運び込まれていたそうです。「犬の散歩をしていたところ、子どもたちから『捨て犬がいる』と聞き、様子を見に行きました。そこにいたのは、典型的な雑種犬。身体は汚れ、人間から虐待を受けたのか、うしろ足に障がいがありました。それがチロリでした」。

 とても見過ごすことができず、大木さんは子犬のもらい手探しに奔走。ところが子犬たちが1匹、また1匹と引き取られていくなか、母犬のチロリが野犬として捕獲され、動物愛護センターに収容されてしまいます。そのことを知った大木さんは、動物愛護センターに走りました。そして、チロリを自分で引き取ることにしたのです。「助け出せたのは、殺処分の1日前でした」。

 こうしてチロリは、大木さんがアメリカから連れてきた大型犬たちが暮らす訓練施設にやってきました。「大型のシベリアンハスキーが6頭もいてハードな訓練をしている場所でしたから、身体が小さく障がいのあるチロリを連れていっても大丈夫かどうか、心配でした。ところが、チロリには並外れた統率力があったんです。なんと、訓練施設内でほかの大型犬たちを従えるリーダー犬になったんですよ」。

多くの人に生きる勇気をもたらしたチロリ。
赤十字のマークが入ったセラピードッグのベストを着て。
仲良しだったハスキー犬のスノーガンと一緒に。

 訓練施設で暮らすチロリの様子を見て、大木さんはある決断をします。チロリをセラピードッグとして教育することにしたのです。「チロリは、仲間の犬が病に苦しんでいる時にそばにじっと寄りそうなど、弱い者への思いやりや深い愛情を示していました。だから、チロリならセラピードッグになれるかもしれないと考えたんです」。もっとも、セラピードッグが普及しているアメリカでは、セラピードッグに向く犬種や適性のある血統の犬を選んで育成するのが一般的。大木さんのもとにいたハスキー犬のなかにも、「親子3代セラピードッグ」という犬もいたそうです。そのような“常識”に立ち向かい、雑種で障がいのある犬をセラピードッグに育てることは、大変なチャレンジだったと言えるでしょう。

 チロリは、大木さんの期待に見事に応えてみせました。「一度、捨て犬として命の危険を味わったチロリは、私といれば生きていけると思っていたのでしょう。いじらしいほど必死でした。通常ならセラピードッグの育成には2年半はかかるのに、なんとチロリはたった半年ですべてを身に付けたのです」。こうしてチロリは、日本のセラピードッグ第一号になりました。

 その後、大木さんとチロリは、日本のセラピードッグ普及に大きな役割を果たしていくことになります。「セラピードッグがなかなか認めてもらえなかった時代、医師たちからは何度も『臨床で効果が確かめられなければ……』と言われたものです。しかし、チロリがセラピードッグとして数々の臨床例を作ったことによって、医師会もセラピードッグの力を認めざるを得なくなっていきました」

 たとえば、アルツハイマーを発症し、失語症とされて要介護5の認定を受けていた長谷川外吉さんのケース。高齢者入所施設でチロリとリハビリをスタートし、当初は無反応だったものの、大木さんが「チロリです。名前を呼んでください」と何度も呼びかけ続けたところ、ある日「面倒くせーなー」と声が出たのだそう。「失語症ではなく、しゃべらないだけだったんですね。その後、『立ってチロリと歩きませんか』と提案したときも、最初は首を横に振っていましたが、しばらくすると部屋の中をつかまりながら歩けるようになりました」。

長谷川さんに寄り添って笑顔のチロリ。
長谷川さんの歩行訓練をじっと見守ります。

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