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相手の“安心領域”に踏み込んではいけない

2013年10月8日

「相手を変える」のは難事業

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 前回は、「YOUメッセージ」と「Iメッセージ」をご紹介しました。「YOUメッセージ」はYOUが主語になる文章で「あなたが悪い」「あなたはこんなにひどい」と相手を非難する言葉です。「私はこうしたい」「こうなってほしい」という、私の願いや希望を表したのが「Iメッセージ」です。

 IメッセージとYOUメッセージの話を、もう少し続けましょう。

 パーソナルスペースという言葉があります。これは人が他者の存在を意識するときに、心理的に安全や安心、安定を感じる物理的な空間のこと。空いた電車にぽつりぽつりと人が座るとき、たいていの人は、周りと十分な隙間を空けて座るでしょう。隙間をとるほうが安心だから、自然にそうなるわけです。

 そんなガラガラの車内で、見ず知らずの人がいきなりあなたの隣にぴったりくっついて座ったら、ちょっとびっくりしますよね? ひょっとしたら、何か怖いものを感じるかもしれない。それは、あなたが感じていたパーソナルスペースの領域にいきなり入ってこられたことで、あなたの安全や安心が侵されたような気がするからです。

 コミュニケーションの場面でも、目に見えるわけではないけれども、それぞれの人にはその人固有の心理的な領域がある、というふうに考えてみましょう。すると、何が安全で何が安心のコミュニケーションであるのか、かなりすっきりと見えてきます。

 たとえば、夫の帰りが遅いので心配していた妻が、夫が帰った途端に

A「何でこんなに遅いのよ! もっと早く帰ってちょうだいよ!」

 と言ったときと、

B「あなたの帰りが遅いので、私、心配で、心配で……」

 と言ったときでは、かなり感じが異なっていますね。この二つのメッセージはどこが違うのでしょうか?

メッセージによる領域侵害

 Aさんのメッセージは、夫を責め、夫に行動の変更(もっと早く帰ってちょうだい)を迫っています。つまり夫の領域に入り込んで責めているのです。責められた夫は防御に立ち上がり、「仕事もいっぱいあるし、付き合いってものがあるんだよ!」などと言うでしょう。

 さらには、攻撃は最大の防御なり、とばかりに「うるさいんだよ! 黙れ!」と邪険にするかもしれません。

 Bさんのメッセージは、夫の行動からくる結果として自分の気持ちを述べています。つまり自分の領域の外には出ていないメッセージなのです。夫に行動の指図もしていません。この場合、夫は領域侵害を受けていないので、自分を防御するために妻を攻撃する必要を感じないのです。

 つまりこの二つのメッセージの違いは、自分の領域内に収まるメッセージか、それとも相手の領域にまで出かけて侵害するメッセージになっているか、の違いと言えます。

 そして、それぞれのメッセージの主語を見ると、AさんのほうはYOUメッセージ、BさんのほうはIメッセージになっているのがわかるでしょう。

 身の回りの人間関係でトラブルが起きたとき、そのコミュニケーションに注意を払ってみましょう。多くの場合、当事者のどちらかが、相手の領域侵害を起こすYOUメッセージを発しているのを発見することでしょう。

 領域侵害を受けたほうは、防御のために立ち上がります。そのやり方は、激しく相手を攻撃し返すこともあれば、表面上黙って内心でメラメラと怒りの炎を上げている、ということもあります。まったく無気力感に陥ることもあります。いずれにしても、相手の安心領域を侵すYOUメッセージが、健全なコミュニケーションを生み出すことは、まずありません。

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Profile
井上 知子
井上 知子(いのうえ・ともこ)
臨床心理士。親子・対人関係などに関するメンタルサポート団体Joyit 代表。1968年奈良女子大学理学部卒業。京都大学、香川大学に約20年間教員として勤務。1989年京都国際学校副校長。1993年にSTEP勇気づけセンター主催のSTEPリーダー資格を取得し、個人事業所を開設。2002 年から4 年間、佛教大学臨床心理学科、京都文教大学大学院臨床心理学研究科博士前期課程で心理学を学ぶ。Joyit の活動に加え、医療法人社団弘冨会神田東クリニック/MPS センター勤務(臨床心理士)、京都文教大学産業メンタルヘルス研究所(臨床心理士)、大津少年センター(思春期悩み相談臨床心理士)などでも活躍する。著書に『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』(日経BP社)がある。
Joyitの連絡先は、Joyit@ma3.seikyou.ne.jp
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