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本音とタテマエの使い分け

2013年9月17日

本音には言っていいことと悪いことがある

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 本音(ホンネ)とか建前(タテマエ)という言葉に対して皆さんはどのように感じるのでしょうか? 本音は本当のことなのに対して、建前は必要悪、できればないほうがいい、と思っている人も多いでしょう。

 私は京都に住んでいて、自宅は「哲学の道」の近くにあります。時々1人で散歩していて、たまにヨーロッパ系の観光客に会うと、とても気持ちのいい会釈が送られてくることがあります。私もニッコリと返したくなる、とてもチャーミングな笑顔なのです。

 ところがアジア系の観光客でこういう経験をしたことはありません。どうしてそうなのだろうと思っていたら、ある考え方にぶつかりました。ヨーロッパは、それこそ世界の火薬庫と呼ばれているくらい、国と国、民族と民族が戦ってきた歴史があります。ある村はこっちの国の領土になったかと思うと次は隣の国の領土となる、しかも傭兵の制度があり、今日はフランスの王様のために働いた雇い兵が明日はハンガリーの王様のために雇われてフランスを襲う、ということがあったとか。すると誰が味方で誰が敵か時々不明になる。したがってワタシハアナタノ敵デハアリマセン、という信号が必要になることがあり、それが笑顔なのだ、という説です。

 へえー、そうか! 自分を守る命がけの歴史に裏打ちされた笑顔なのか、と思った次第。歴史に裏付けられた建前なのですね。

● 「ぶぶ漬けでもいかがどすえ」

 では、わが日本はどうでしょう。歴史を語るなら、日本の中で京都ほどふさわしい場所はありません。そして京都と言えば、皆さんよくご存知の“ぶぶ漬け”(お茶漬け)の習慣があります。

 他人の家を訪問したときに「ぶぶ漬けでもいかがどすえ」と勧められたら、それは“もうそろそろお帰りやす”ということであると。それなのに「ほな」とか答えてぶぶ漬けを出されるのを待って食べて帰ったりすると、「ホンマに鈍いお方やなあ」と言われるはめになるとか……。他府県出身の私は「これってホンマの話?」とセミナーの場にいた京都育ちの人に尋ねてみると、「まあ、そうですねぇ。そういうこともあるかと……」と、否定されませんでした。

 これは、食事のしめの一つである茶漬けを出すことで、終わり(長居の終わりや会話の終わり)を指しているとされていて、暗に帰宅を催促しているものなのだそうです。勧められた場合は丁重に断って帰宅するか、実際に出されてしまった場合には食べ終わったら即退散することが好ましいとされ、間違ってもお代わりを要求したりはしないこと。「帰ってください」の代わりに「ぶぶ漬けでも……」というのは婉曲の表現で、これぞ建前の極み。ここまでいくと、ある意味、芸術の域ですね。

 でもこれも長いこと京都が都であったことを考えると、なるほどなあ、と思います。源平の時代や応仁の乱、幕末の動乱といった歴史を見ても、そこはまさに誰が敵か味方か不明の世界。トラブルを避けるために、あるいは身を守るために発達した方便なのかもしれない、と思います。

 こんなふうに考えると、何でも真っ正直に「建前はないほうが良い」と単純化してしまうのもどうかと私は思うのです。むしろ建前は必要なときがあります。場合によっては潤滑油ではないかと思うぐらい。実際、建前的な表現があるからこそ不必要なトラブルが避けられているとか、物事が柔らかくなってスムーズに進んでいるといったこともあるでしょう。いつも本音では、角を突き合わせることも出てくるように思います。

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Profile
井上 知子
井上 知子(いのうえ・ともこ)
臨床心理士。親子・対人関係などに関するメンタルサポート団体Joyit 代表。1968年奈良女子大学理学部卒業。京都大学、香川大学に約20年間教員として勤務。1989年京都国際学校副校長。1993年にSTEP勇気づけセンター主催のSTEPリーダー資格を取得し、個人事業所を開設。2002 年から4 年間、佛教大学臨床心理学科、京都文教大学大学院臨床心理学研究科博士前期課程で心理学を学ぶ。Joyit の活動に加え、医療法人社団弘冨会神田東クリニック/MPS センター勤務(臨床心理士)、京都文教大学産業メンタルヘルス研究所(臨床心理士)、大津少年センター(思春期悩み相談臨床心理士)などでも活躍する。著書に『人づきあいがラクになる「心理学の教え」』(日経BP社)がある。
Joyitの連絡先は、Joyit@ma3.seikyou.ne.jp
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